2019 Fiscal Year Research-status Report
視聴覚統合による物体認識に重要な脳内機構:エコーロケーションをモデルとした研究
Project/Area Number |
19K16192
|
Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
古山 貴文 金沢医科大学, 医学部, 助教 (20802268)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 光学計測 / クロスモーダル知覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、視聴覚統合による物体認識に重要な脳内機構を解明することである。多くの動物は複数感覚から得た情報を脳内で統合し、周囲の環境を把握している。複数感覚の統合は、円滑なコミュニケーションや適切な物体認識に重要である。本研究では、動物を被験体として、視覚―聴覚間の神経回路を明らかにし、その神経活動を任意操作することで、視聴覚統合による物体認識行動にどのような変化を与えているかを明らかにしていく。 本年度では、コウモリの聴覚野においてエコーロケーション音声処理がどの脳部位で処理されているかを検討した。脳活動部位の同定には、脳表面に光を当て、ミトコンドリアの活動変化で生じる反射光の強さを分析し、脳の活動部位を画像化する方法を使用した。トーンバースト音(20、40 kHz)とエコーロケーション音声を提示した結果、コウモリの聴覚野における周波数地図(特定の周波数に反応する神経細胞が規則的に配置されていること)の作成をすることができた。また、エコーロケーション音声に対する脳活動範囲はトーンバースト音に比べて広範囲で観測された。この結果から、聴覚野においてエコーロケーション音声を処理するためには、特定領域だけではなく、聴覚野全体で処理していることが示唆された。 さらに、脳活動計測時の頭部の動きによる干渉を防ぐために、頭部固定オペラント条件付けに必要な環境を構築した。これにより、頭部の動きによる干渉を軽減し、課題中の動物から脳活動を計測することが可能となる。 またヒトを対象として、視覚―聴覚間の感覚統合で起こる錯覚(ダブルフラッシュ効果)に必要な音情報について実験した。その結果、聴覚情報は同じ音の高さの刺激が連続する必要であることが分かった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、コウモリを含めた動物を対象に、光学計測を用いて脳活動を可視化する環境を構築した。これにより、各感覚野の脳活動を可視化することが可能となった。申請者自身の異動もあったが、異動先においても同様の脳活動計測方法を立ち上げることに成功した。これにより、感覚統合している際の脳活動を他の動物間で比較することが可能となった。 さらに、頭部固定オペラント条件付けに必要な環境についても構築した。これにより、課題遂行中の動物から、頭部の動きによる干渉なしで脳活動を計測することが可能となった。 また異動先の研究室において、様々な免疫染色法について学ぶことができた。これにより、脳活動で生じる最初期遺伝子(c-Fos)の免疫染色に成功し、コウモリ・スナネズミを対象に種間比較することが可能となった。 以上より、研究はおおむね順調だと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、頭部固定をした動物を対象に、視覚、聴覚、および視聴覚同時刺激を行い、行動変化について検証する。さらに、各刺激における脳活動を計測し、視聴覚同時刺激に必要な脳部位について明らかにする。また、c-Fos染色を行い、視聴覚同時刺激時に活動する脳部位を免疫染色にて解剖学的に同定する。
|
Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、予定していた学会が台風で中止になったためである。また本年度では、オペラント条件付けのセットアップを自作し、予定していた予算より安く作成することができたためである。 次年度では、感覚統合に必要な脳部位の同定のため、薬品および機材購入に予算を充当する。
|