2019 Fiscal Year Research-status Report
ドーパミン放出の可塑的変化から明らかにする記憶想起の神経機構
Project/Area Number |
19K16194
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Medical Science |
Principal Investigator |
長野 慎太郎 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 主任研究員 (30631965)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ドーパミン / 連合学習 / ショウジョウバエ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ショウジョウバエを用いて、記憶形成によって生じるドーパミン放出を制御する神経機構を解明し、記憶想起におけるドーパミンの生理的役割を明らかにすることを目的とする。本年度は、主にドーパミン放出を制御し記憶想起を担う神経機構を薬理学的手法を用いて網羅的な検索を行なった。具体的には、ショウジョウバエの生体内で生じるドーパミン放出をイメージング法を用いて観察し、そこに各種分子の阻害剤を加えることで、ドーパミン放出に影響が生じるか検討した。その結果、通常よりもドーパミン放出が減少し、ドーパミン放出を制御する複数の候補分子を発見した。次に、これら候補分子を遺伝学的な手法を用いて遺伝子発現を抑制し、行動実験で学習記憶を調べた。候補分子の多くで有意に記憶テストの結果が低下したことから、候補分子が学習記憶に必要であることを見出した。そこで、これら分子を手がかりに、様々な神経種でこれら分子の遺伝子発現を遺伝学的に抑制し、学習記憶を行動実験で調べた。すると、特定の神経種でこれら分子の発現抑制を行うと、記憶テストの結果が低下することを見出した。このことからこの神経種が記憶想起に関与するドーパミン放出を制御することが示唆された。これら分子はこれまで、学習記憶に関与することが知られておらず、また、ドーパミン放出の制御を担うことも明らかになっていない。そのため、本研究によってドーパミン放出を介した新規の記憶想起機構の発見となる可能性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、網羅的検索により新規分子を見出すことができた。また、この分子が学習記憶に関与することも明らかにしたことから、研究の進捗は順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、記憶想起に関与する分子と神経種が実際にドーパミン放出を制御しているのか明らかにしていく。具体的には生体内イメージング法を用いて、分子を神経種でだけ遺伝子発現抑制し、この時、ドーパミン放出に影響が生じるか検証していく。また、神経種の神経活動を人為的に調節し、ドーパミン放出に影響が生じるか検証していく。そのために、現在、必要な実験装置と実験材料をセットアップ中である。
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Causes of Carryover |
光遺伝学的手法を用いて神経活動を制御する実験を予定している。その購入費を1年目に計上したが、実験の進行の都合から翌年度以降へと購入を遅らせることにしたため、次年度使用額が生じた。
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