2020 Fiscal Year Research-status Report
kissing-loopを有する分割型tRNAの創製
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19K16204
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
無津呂 裕美 (青木裕美) 東京理科大学, 基礎工学部生物工学科, 助教 (00794570)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | RNA / tRNA / kissing-loop / AlaRS |
Outline of Annual Research Achievements |
RNAは遺伝情報の保存・伝達の役割の他に、自身が触媒として機能するリボザイムという側面もあわせ持つ。そのため、原始地球においてはRNAがDNAとタンパク質の機能をも受け持つ「RNAワールド」が存在したという仮説があり、初期に機能していたRNAはより単純なものであったと考えられる。 本研究ではRNAワールド時代に存在した単純なRNAから、現在の複雑なタンパク質産生系へと進化した過程を究明する。そこで、申請者はtRNAに着目した。tRNAは、コドンを認識するアンチコドンループ、アミノ酸が付与されるアクセプターステムなどと、複数の機能ドメインを持っており、アミノアシルtRNA合成酵素が、それぞれのtRNAを厳密に認識している。申請者は、別々の機能を持つ短いRNAが結合して複数の機能をもつRNAへと進化したのではないかと考えた。つまり、単機能RNA同士が結合し、それがtRNAと進化したと考えている。本研究では、これを証明するために、分割型tRNAの創製を目指す。 短い非機能性RNA同士をkissing-loopを介して相互作用をさせ、tRNA様の機能を持つRNAを創製する。kissing-loopを介して形成された二分子RNA系が、アラニルtRNA合成酵素(AlaRS)に認識されることを利用して、目的のRNA生成の検出を行う。AlaRSはtRNAに含まれるG-U塩基対を正確に認識するため、2つのRNAが相互作 用し、tRNA様の構造を取った場合にのみ、アミノアシル化がおこる。本年度はkissing-loopを介した二分子型RNAを用いてアミノアシル化を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は昨年度作製した「kissing-loopを有する分割型tRNA様RNA」と「AlaRS 442N」を用いてアミノアシル化を行い、目的RNAの完成を検出した。 「kissing-loopを有する分割型tRNA様RNA」はmini-G3とmini-U70の二つのRNAから構成される。これらは短いヘアピン&ループであり、mini-G3はG-C塩基対、mini-U70はA-U塩基対を保持している。この状態ではAlaRSに認識されない。mini-G3とmini-U70を混合するとkissing-loopを介して構造変化が起こり、G-U塩基対が形成され、AlaRSに認識・アミノアシル化される。 アミノアシル化には「AlaRS 442N」変異体を用いた。これはアミノアシル化部位のみをもつAlaRSである。アミノアシル化の検出には炭素の放射性同位体である炭素14を用いた。mini-G3とmini-U70を混合したRNA溶液を用いると、AlaRS 442Nによるアミノアシル化が検出された。対照実験として、G-U塩基対を形成しないmini-C70や、kissing-loopを形成しないmini-U70-ACAAUAAを用いて実験したところ、アミノアシル化は検出されなかった。本実験により、「kissing-loopを有する分割型tRNA様RNA」の完成を証明することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はさらに長いRNAを用いて、分割型tRNAの作製を試み、様々な場面で応用可能なことを証明する。
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Causes of Carryover |
昨年度繰り越し金額が多かったため、次年度使用額が増加した。また、新型コロナウイルスの影響で学会などに参加できなかったため。
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