2019 Fiscal Year Research-status Report
Phylogeographic history and local adaptation in Japanese macaques: application of population genomics and morphometrics
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19K16211
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
伊藤 毅 京都大学, 霊長類研究所, 助教 (20711485)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 系統地理 / 集団史 / 進化量的遺伝学 / 形態 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゲノムと形態に基づき、ニホンザルの東西分化構造と局所適応を明らかにすることを目的とする。本年度は、ゲノムワイド一塩基変異データに基づく集団遺伝学的・系統学的解析、遺伝試料の整理、形態データの収集、形態解析の方法論の検討、形態変異の環境要因に関する研究を行った。集団遺伝学的・系統学的解析では、当初の予定通り4集団21個体のサンプルについてddRAD-seq解析を行い、これまでに得られていた6集団96個体のサンプルのデータと合わせて、ニホンザルの集団構造、系統関係、遺伝子流動を推定した。結果、ニホンザルはアカゲザルとタイワンザルを含むクレードと姉妹群を形成すること、中部から関東の地域を境界とする東西のクレードに分かれること、東西クレードの集団間に遺伝子流動があったこと、ヤクザル亜種は西クレードに含まれる(つまり本土亜種は側系統である)が遺伝的に顕著に分化していることが示唆された。この成果は、学会で発表した他、論文としてまとめ、国際学術誌への投稿の準備を進めた。また、ヤクザルの1個体について、全ゲノムリシーケンスを行った。遺伝試料の整理については、共同研究者から東日本の野生ニホンザルの試料の提供を受け、それらのデータベースの作成を進めた。形態データの収集では、約100個体分のCT撮像を行い、予備的な解析により、ヤクザルが形態的にも顕著に分化していることを明らかにした。形態解析の方法論の検討においては、CT画像データのセグメンテーション方法の開発とセグメンテーション方法の違いが計測誤差に与える影響の評価を行い、その成果を論文にまとめ学術誌に投稿した。形態変異の環境要因に関する研究では、野生個体と飼育個体の形態差に関する成果を国際学術誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
集団遺伝学的・系統学的解析に予想以上に時間がかかったことで、年度内に論文を投稿することができず、形態データの収集作業にも若干の遅れが生じたため。
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Strategy for Future Research Activity |
集団遺伝学的・系統学的研究の成果については概ね投稿の準備が整っているので、共著者の確認と英文校閲を経て直ちに投稿する。形態データの収集を進め、遺伝的変異と比較することで、形態の地理的変異の形成に自然選択が働いた可能性を検証する。また、これまでの研究でヤクザルが遺伝的にも形態的にも顕著に分化していることが示されたため、とくにヤクザルと本土ザルの差異に焦点を絞り、全ゲノムリシーケンス解析を行う予定である。
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Research Products
(4 results)
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[Presentation] 核ゲノムの系統から見直すニホンザルの形態変異と進化史2019
Author(s)
伊藤毅, 早川卓志, 橋戸南美, 田中美希子, 濱田穣, 栗原洋介, 半谷吾郎, 兼子明久, 夏目尊好, 愛洲星太郎, 本田剛章, 谷地森秀二, 姉崎智子, 新宅勇太, 近江俊徳, 羽山伸一, 今井啓雄, 若森参, 川本芳
Organizer
日本進化学会第21回大会
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