2020 Fiscal Year Research-status Report
Researches on pollination system of three Mucuna species in Asia
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19K16215
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
小林 峻 琉球大学, 理学部, 助教 (60838150)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | トビカズラ属 / 送粉生態 / 哺乳類 / アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、これまで見過ごされてきた、送粉者としての非飛翔性哺乳類のアジア域における重要性を明らかにし、非飛翔性哺乳類媒植物の進化プロセスを推定することを目的としている。本研究で対象とするのは、マメ科トビカズラ属で、その中でも、アジアに分布する種のみで構成されているサブクレードに属するMucuna macrocarpa、M. birdwoodiana、M. thailandicaの3種である。 2020年1月にタイにおけるM. macrocarpaとM. thailandicaの野外調査を開始したものの、2020年2月には新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、本課題後半の中心となっていた、タイ北部におけるMucuna属2種の送粉者の特定に関する野外調査を中止した。現在も申請者自身が調査に行けない状況が続いている。また、同様の理由により2020年度は国内の野外調査も実施しなかった。タイに調査機材を設置したままの状態になっていたが、共同研究者に依頼し調査機材を回収するとともにデータを共有した。その結果、一部の機材でM. thailandicaの訪花者が記録されていたため、現在訪花行動について解析を進めている。 2019年度前半に当初の計画よりも調査が進んだ結果、M. birdwoodianaと同所的に分布しているM. championiiの送粉様式も調査することができた。M. championiiがヒマラヤクリゲネズミとコバナフルーツコウモリに送粉されることを示した結果は、国際誌に掲載された。また、前年度までの調査で明らかになったM.macrocarpaの訪花者の飛翔性と哺乳類相が結実する高さに及ぼす影響に関する論文も国際誌に掲載された。さらに、2020年度までに採集したMucuna属8種の香気成分の解析を行い、送粉者や系統的な傾向があるかどうかについて、国内学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度末に予定通りタイ北部において、M. macrocarpaとM. thailandicaの送粉様式の解明のための野外調査を開始したものの、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、調査は途中で中断した。その後、申請者自身では現地に行くことが不可能な状態となり、一時的に調査地の国立公園への一般人の立入も禁止されていた。調査地の国立公園の一般人の立入が可能となった後、現地の共同研究者に依頼し、設置していた自動撮影カメラを回収した。回収したカメラの一部は故障していたり、カメラの一部は盗難被害に遭ったりしたが、一部データが保存されていたため、現在画像データの解析を進めている。M. thailandicaに向けて設置していたカメラに録画されていた映像には、訪花者が記録されているものが含まれていた。一方、M. macrocarpaに向けて設置したカメラはほとんど盗難被害に遭い、残ったカメラもカメラの不調で、2月以降については訪花者に関する有効なデータが得られなかった。 誘引形質のひとつと考えられる香気成分の種間比較については、沖縄工業高等専門学校の共同研究者と解析を進めた。新型コロナウイルス感染拡大の影響で、十分な花数を採集することはできなかったものの、香気成分の解析を実施した。その結果、送粉者と対応した香気成分は検出できなかった。また、M. macrocarpaは送粉者が異なるタイ、台湾、沖縄、大分の4地域から採集したが、地域間で香気成分の大きな違いはなかった。一方、M. giganteaは沖縄島と西表島で香気成分が大きく異なり、M. membranaceaeは個体差が大きいなど、種によって個体群間の差が大きい場合や、個体間の差が大きい場合があることが明らかになってきた。これらの研究成果は予定通り国内の学会で発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度も海外で野外調査を実施することはできない見込みである。そのため、海外において実施予定だった花の外部形態に関するデータの収集の続きや、2020年度の結果に基づいた追加調査は実施しない予定である。一方で、本課題の中で最も重要な、自動撮影カメラを用いた送粉者の特定については、現地の共同研究者の協力により、2020年度内に調査データの一部を回収することができた。これまでに回収できたデータに基づき、訪花者の報告が一切ないM. thailandicaの訪花者についての画像の解析を進める。また、国内で実施可能な野外調査については実施し、データを補完する。 誘引形質の1つである花の香気成分についても2020年度に8種について解析を進めた。現在のところ、本属の系統的な傾向や、特定の送粉者を誘引する香気成分についての傾向は見いだせていないが、本年度は追加解析を実施し、本属の香気成分と送粉者との対応関係についてさらに検討する。 前年度は発表予定であった国内学会が中止となったり、野外調査ができずデータ回収が実施できなかったりしたことから、成果の公表についても遅れが生じた。本年度は、現地の共同研究者の協力で得られたデータをもとに、当初予定していた成果の公表をしていく予定である。 野外調査や対面で実施される学会発表については、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら実施・参加の可否を判断する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により、タイ北部におけるM. thailandicaおよびM. macrocarpaの送粉者に関する野外調査が中断した。その結果、2020年度はじめに実施予定であった野外調査が中止となった。さらに、国内における野外調査も全て中止した。野外調査を中止したことに伴い、その研究成果のまとめも実施できなかった。国内学会も中止やオンラインになったことで成果の公表ができなかったり、旅費の支出がなかったりした。 2020年度中にタイの共同研究者に機材回収をしていただき、データを共有した。その結果、一部のカメラでタイ北部におけるM. thailandicaの訪花者について記録ができていた。申請者が直接タイに行き調査を行うことができる見通しが立たないため、タイにおける訪花者のまとめは既に得られているデータで実施する。一方で、国内における野外調査は、新型コロナウイルスの感染状況を見極めながら実施し、データを補完する。研究成果については、昨年度調査が出来ずに遅れが生じた分を公表していく。昨年度中止となった学会も、本年度はオンラインで実施される予定であることから、学会での成果の公表も行っていく。
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Research Products
(6 results)