2021 Fiscal Year Research-status Report
餌資源の分割によるハエトリグモ類の多様性創出と維持
Project/Area Number |
19K16216
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山崎 健史 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (90746786)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ハエトリグモ科 / アリグモ属 / 系統 / 食性 / 安定同位体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、餌資源の分割が、多種のハエトリグモ類の共存メカニズムにどのように影響しているかを調べることである。そのため、ハエトリグモ類の多様な熱帯亜熱帯地域(台湾)と、温帯地域の日本におけるハエトリグモ類各種の栄養段階を、炭素と窒素の安定同位体比解析から明らかにし、栄養段階の混み合いを調べることが必要である。また、ハエトリグモ類の食性に系統的な制約があるのかを調べるため、ハエトリグモ類の系統解析も行い、食性の進化について考察する。 2020年度から、新型コロナウイルスの影響で、国外調査が実施できず、国内の調査も十分なサンプルが得られるような調査が実施できなかった。そのため、2019年度までに採集したサンプルを用いて、安定同位体比分析、系統解析を行った。 2021年度は、特に、申請者らの先行研究にて、食性の傾向が明らかになっているハエトリグモ科アリグモ属について、系統解析を行った。ミトコンドリアDNAのCOI領域、16S領域、核DNAの28S領域を用いて、系統推定を行った結果、アリグモ属は、複数のクレードに分けられることができ、形態的な差も大きいことから、別属として分けることが妥当だと考えられる。すでに、他の研究者らが、形態情報のみをもとに、アリグモ属を複数属に分ける仮説を提案しているが、その仮説のもとに分けられた属は、今回の系統推定により、単系統性を考慮したものになっていないことが分かった。引き続き、系統解析をもとにした、属の整理が必要である。また、系統樹上で食性の進化を見てみると、植物食、雑食、肉食傾向の種は、複数回、独立に出現していることが推定された。 2019年に採集したサンプルの安定同位体比解析では、国内のハエトリグモ類においては、植物食のような食性を示す結果は得られておらず、雑食から肉食傾向があることが示唆されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染の波が、フィールドシーズンと重なり、思うように、野外調査を実施できなかった。一方で、系統解析などの、既存のサンプルを用いた実験室内の作業は、進んでいる。しかし、新規サンプルでの解析も必要なため、全体的には、遅れていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度2022年度も引き続き、実験室内の作業を進める。野外調査は、国内調査を、6月から8月にかけて予定している。この調査で新規サンプルを集めることを目標にする。
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Causes of Carryover |
本研究では、新規で野外からハエトリグモ科のサンプルを採集して解析することが必須である。しかし、新型コロナウイルスの影響のため、サンプルの出現時期に合わせての野外採集が困難であった。そのため、旅費や新規サンプルの解析に使用する予定の予算に大幅な余りが生じしてしまった。 本研究は、2022年度までの延長を申請しており、2022年度に再度、野外調査とサンプルの解析を行う予定である。
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Research Products
(2 results)