2019 Fiscal Year Research-status Report
海水魚類の種分化過程における生殖隔離の進化に生理・生態・行動からせまる
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19K16217
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
武藤 望生 東海大学, 生物学部, 講師 (50724267)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 繁殖期 / 地理的変異 / 生殖隔離 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,キツネメバルとタヌキメバルの繁殖期の相違にもとづく生殖隔離の検証を主眼として研究を行った.それと同時に,次年度以降の研究にむけての準備もおこなった. 北海道の日本海沿岸と石川県能登半島周辺において,それぞれ2019年6-9月と2020年2月にキツネメバルとタヌキメバルの生鮮標本を採集し,生殖腺の重量測定,生殖腺の目視観察による雌雄判別および成熟/未成熟の判定,体長と体重の測定をおこなった.また,主として2000年代以降に石川県能登半島周辺,岩手県宮古周辺,および北海道日本海沿岸を中心とする日本各地で採集された博物館所蔵標本(ホルマリン固定標本)についても,同様の分析を行った.その結果,キツネメバルとタヌキメバルは最小成熟サイズが異なる可能性,いずれの種も性比が雌にかたよる可能性,キツネメバルとタヌキメバルそれぞれにおいて繁殖期が地域的に異なる可能性などが示唆された.一方,各地域における両種の繁殖期の相違については十分に検討できなかった.これは,両種の繁殖期(交尾期)である晩夏~初冬にかけての標本が不足したことにくわえ,交尾期の推定に重要な雄の標本が不足したためである(メスの生殖腺は交尾後も発達をつづけるため,交尾期の推定には向かない). 本年度中に採集した生鮮標本については,次年度以降の分析に使用する耳石と筋肉片を採取した.また,標本採集地域の研究協力者と協議して今後の標本採集の体制をととのえた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
先述の通り,当初の目標であった繁殖期の種間差の検討が十分でない.一方,成熟サイズや性比といった,生殖隔離に関係するかもしれない形質について,当初想定していなかった結果が得られた.さらに,次年度以降の標本採集と分析にむけて体制を整えることができた.以上を総合的して,やや遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に不十分であった点の補完として,晩夏~初冬にかけて重点的にサンプリングを行ってサンプル不足を解消し,繁殖期の種間差の検討を行う.ただし,新型コロナウイルスの影響により,地域によってはサンプリングを実施できない可能性が高い.状況を見て対象地域を絞るなど,柔軟に対応していく予定である. また,2020年度以降に実施する予定であった耳石の分析や遺伝解析についても,新型コロナウイルスの影響による大学閉鎖により,実施の見通しが立たない状況である.これらについても状況をみて柔軟に対応していく予定である.
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Causes of Carryover |
顕微鏡と冷凍庫を購入しなかったことが主な要因である.これらは次年度以降の購入を検討している.
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