2022 Fiscal Year Research-status Report
海水魚類の種分化過程における生殖隔離の進化に生理・生態・行動からせまる
Project/Area Number |
19K16217
|
Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
武藤 望生 東海大学, 生物学部, 准教授 (50724267)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | 生殖隔離 / メバル属 / 交雑 / 生活史 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本州中部日本海沿岸,同北部太平洋沿岸,および北海道日本海沿岸の3地域からそれぞれ採集した標本の遺伝解析を中心に行い,ほぼすべての標本から遺伝データを取得した.さらに,取得したデータを用いて集団遺伝解析を予備的に実施した.その結果本研究開始時点での予測とは異なり,北海道日本海沿岸の標本はキツネメバルとタヌキメバルのいずれとも遺伝的に異なる第三の集団(種)であることが判明した.この種のゲノムは全体的にキツネメバルとタヌキメバルの中間的な特徴をもつ一方で,一部の領域には両種との相違がみられた.したがって両種の交雑に由来する種であると推定された.一方,本州北部太平洋沿岸の標本には上記3種およびそれらの交雑個体が,本州中部日本海沿岸にはキツネメバルとタヌキメバルだけが含まれていた. 標本の年齢-成長関係および生殖腺の発達を予備的に解析した結果,標本の採集地点と対応した地理的傾向がみられた.これは種によって生活史特性が異なることを反映していると思われる.この推測を検証するために,今後は遺伝解析によって識別した種ごとに生活史特性を解析していく予定である. テスト用サンプルを用いて耳石薄片を作成し,酸素安定同位体比分析に適した薄片が作成できることを確認した.また,上記遺伝解析の結果をもとにして,酸素安定同位体比分析に供する標本を選定した. 上記と並行して,キツネメバル種群の近縁グループであるシマゾイ-クロソイの間の生殖隔離機構に関する論文をJournal of Heredityに投稿し,受理された.また,同じく近縁グループであるヤナギノマイ-ガヤモドキの種分化過程に関する論文をBiological Journal of the Linnean Societyに投稿し,受理・出版された.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス感染拡大の影響により標本採集が予定通り実施できず,研究計画がすべて後ろ倒しで進行している.一方,キツネメバル種群の近縁グループを対象とした解析は,当初はキツネメバル種群との比較用を目的としていたが,予期せず単独 で重要な結果が得られたことから,2編の論文を公開することができた.以上を総合して「やや遅れている」と判断した.
|
Strategy for Future Research Activity |
不足している遺伝データを取得し,全標本を遺伝的に識別する.また,耳石の酸素同位体比分析を実施して回遊履歴を推定する.種ごとに生活史と回遊履歴を整理して,生殖隔離との関連を議論し,論文化して投稿する.
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大の影響により標本採集が予定通り実施できていなかったことから,標本に対する分析の費用として計上していた金額が使用できず, 次年度使用が生じた.先日した方針で分析を計画しており,この分析に充当する.
|