2023 Fiscal Year Annual Research Report
海水魚類の種分化過程における生殖隔離の進化に生理・生態・行動からせまる
Project/Area Number |
19K16217
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
武藤 望生 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (50724267)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 種分化 / 生殖隔離 / 耳石 / 酸素同位体比 / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度は,昨年度までにゲノム解析および耳石薄片の作成が完了した標本をもちいて,耳石酸素同位体比の時系列データを取得した.この分析により,遺伝的分化が明瞭である本州中部日本海沿岸のキツネメバルとタヌキメバルのの経験水温(生息水深の指標)の分離を検証した.その結果,生活史の初期には耳石酸素同位体比は種間でおおきく重複し,いずれの種でも短期間で著しく変動する一方,生活史の進行にともない種間で分離が認められるようになり,両種の成熟年齢到達後には明瞭な分離がみとめられた.以上から,キツネメバルとタヌキメバルはいずれも生活史の初期には水温の変動性が高い浅海域に分布するものの,生活史の進行とともにそれぞれ分布を深所にうつし,成熟後は異なる水深帯に分布すると考えられた.この結果は,両種の生殖隔離には生息水深の分離が寄与していることを示唆する. 研究期間全体を通じて,キツネメバル種群に関しては次の成果がえられた:1)キツネメバルとタヌキメバルの生殖隔離には生息水深の分離が寄与していると考えられる,2)キツネメバル種群にはキツネメバルとタヌキメバルのほかに両種の交雑に由来する第三の種が存在し,これら三種間の交雑個体も生じている,3)三種および交雑個体の分布は重複するものの完全に同一ではなく,南北のかたよりがある.さらに,より遠縁で自然環境下では交雑しないメバル属の種間には非対称的な遺伝的不和合性が進化していること,別の遠縁な種間には分岐過程の一時期に交雑(種間の遺伝子流動)があったと推測されることも明らかにした.
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