2021 Fiscal Year Annual Research Report
寄生生態と初期発生様式から探るハナゴウナ科腹足類の多様化プロセス
| Project/Area Number |
19K16221
|
|---|
| Research Institution | Meguro Parasitological Museum |
|---|
Principal Investigator |
高野 剛史 公益財団法人目黒寄生虫館, その他部局等, 研究員 (50794187)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
| Keywords | 寄生 / 腹足類 / 種多様性 / 初期発生 / DNAバーコーディング / 分子系統解析 / ミトゲノム |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
寄生生物は地球上のあらゆる環境で普遍的にみられ、高い種多様性を示す。その多様化過程には宿主転換や宿主特異性の獲得が重要とされるが、多くの海産系統で進化史は未解明である。棘皮動物を宿主とする寄生性巻貝であるハナゴウナ類は、形態的・生態的多様性が極めて高く、寄生進化の研究対象として興味深い。一方、正確な種多様性の把握に至っておらず、寄生生態にも不明な点が多い。本研究では、ハナゴウナ類の網羅的サンプリングを実施し、遺伝子と形態情報により分類を整理、系統関係および各種の宿主利用・分散能力・地理的分布を検討することで、海洋における寄生生物多様化プロセスの解明を目指す。
新型コロナウイルス感染症の影響で野外調査の実施が難しい状況が続いていたが、小笠原諸島および鹿児島県でサンプリングを行い、ウニおよびクモヒトデ類の内部寄生種を得た。形態と寄生状況から、後者は未記載種と判断された。これらはハナゴウナ科の進化史を解明する上で重要と考えられたため、核とミトコンドリアDNAの複数領域の塩基配列を決定し、科内での系統的位置を検討した。
また本年度、引き続きセトモノガイ属、ガンガゼヤドリニナ属の種を中心にDNAバーコーディングを行い、殻形態・寄生生態との対比を進めた。セトモノガイ属について分子系統解析を行ったところ、系統的に離れた複数種が単一種のナマコに寄生する傾向が示された。頻繁な宿主転換がセトモノガイ類の多様化をもたらしたと考えられる。加えて、昨年度からデータを取り始めたフタオビツマミガイ属貝類について、日本とニューカレドニアで新たに確認された宿主―寄生者関係をまとめ、形態と遺伝子情報に基づき分類を整理し、論文として発表した。本属貝類には、宿主転換および生息地の地理的距離が影響したと考えられる遺伝的差異が見出され、これはハナゴウナ類の種分化・多様化過程の解明につながる知見と期待される。
|
