2019 Fiscal Year Research-status Report
不均質な空間構造下における水産資源種に対する最適な管理政策についての理論的研究
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19K16225
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
別所 和博 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (00792227)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 数理生物学 / 数理生態学 / 水産学 / メタ個体群 / 資源管理 / 個体群生態学 / 空間生態学 / 藻類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
アワビ類をはじめとした水産有用種について、その安定した資源管理のための数理的研究を、浮遊幼生等の受動的分散で結合されたメタ個体群動態モデルの解析という視点から行うことが、本研究の目的である。 2019年度は、まず埼玉医科大学という新たな研究環境において、上記数理モデリング研究を行うための環境を確立することを第一の目標とした。そこでは数理モデリングの解析や数値シミュレーションを行うために必須である研究用PCやソフトウェアを購入し、前年度の研究環境が引き続き維持される環境を構築した。 次に、予備的研究として行ってきた、局所集団が占有か非占有の2状態のどちらかを必ずとるという数理モデルの解析を進め、その結果が国際英文誌Journal of Theoretical Biology誌に掲載されることが決まった。 現在は、上記研究の発展的研究を行っている。先行研究では、局所個体群が占有・非占有どちらかの状態を必ずとることを仮定したが、現実的に局所集団はその健全さ(生息個体数の大小)が連続値として評価されるはずである。そこで、局所個体群すべての個体群動態を明示的に考慮した数理モデルを構築し、その解析を総合研究大学院大学の佐々木顕教授らと進めている。例えば、この発展的モデルにおいても、メタ個体群の質を、局所個体群の質を決めるパラメーターや、移動分散パラメーターからなる行列の主要固有値として求められることなどが、現在明らかになっている。また、これらの研究手法を応用することで、同じく水産資源として重要な藻類の個体群動態についての数理的研究も進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度は予定通り、パッチ占有モデルを完成させて、その結果を論文雑誌に掲載するところまで遂行し、それをベースとした新たなモデルの構築まで研究を進めることができた。 だが、新型コロナウィルス感染症の影響で、参加予定であった学術集会が中止になり、また共同研究者との打ち合わせも行うことができなくなった。これらの影響で、研究を進めるペースや情報交換に乱れがでており、それを踏まえて研究計画の遂行に多少の遅れがでているものと判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、水産有用種に関するメタ個体群動態についての研究を進めていく。 特に、先行研究であるパッチ占有モデルの欠点を克服した、より一般的なメタ個体群モデルの解析を進めていく。現時点で、すでにメタ個体群の質を行列の固有値問題として扱えることが明らかになっているので、今後は、その固有値をどのように近似すればよいのか、という問題や、シミュレーションを使った近似の評価を進めていく。新しいモデルも、先行研究も、ともに空間構造が資源動態にもたらす影響を行列の固有値で評価できることが分かっているため、これら2種類のモデルを比較することで、先行研究から得られた結果の頑健性や、相違点を明らかにできるものと期待している。 また、アワビ類のメタ個体群モデルを応用することで新たに構築した、藻類の個体群動態についても、解析を進めていくつもりである。藻類は、それ自体が資源として利用されているだけでなく、アワビ類などの餌資源であるという意味で重要である。幼貝と親貝というステージ構造が重要であるアワビ類に対して、藻類はhaploidとdiploidの倍数性構造が重要である。この相違点に着目して分析を進めることで、上記、アワビ類のモデルについても理解が掘り下げられるものと期待している。 最後に、本研究計画では、国内や海外の研究室を訪問し、研究相談を行うことを予定していた。しかし、新型コロナウィルスの影響でこれらを今後、予定通り進められるかについては不明である。これについては、例えば、ZOOMなどの手段でリモート研究相談をするなど、代案を考えることも含めて、柔軟に対応していく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響で、春に参加予定であった学会等が中止になり、結果として差額が生じた。これら一部については延期となったものもあるため、差額研究費については次年度の研究集会への参加や、論文執筆等により必要となる費用として利用したいと考えている。
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