2020 Fiscal Year Annual Research Report
生態系における雌雄差の重要性 - 寄主の雌雄差がもたらす波及効果を解き明かす
Project/Area Number |
19K16229
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
辻 かおる 京都大学, 生態学研究センター, 研究員 (40645280)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 雌雄差 / 花 / 微生物 / 送粉 / 結実 / 花蜜 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年に引き続き、花に棲む微生物がヒサカキの繁殖にどのような影響を与えているのかを解明するため、雌雄異株植物ヒサカキ(Eurya japonica)の花に、ヒサカキの花から単離されたMetschnikowia 属の酵母とAcinetobacter属の細菌を実験的に再導入した。すると、酵母を導入した際には花蜜の酸度に変化が見られない一方、細菌を導入すると花蜜の酸度が低下した。Acinetobacter属の細菌は代謝過程で、糖を酸に変える性質があることが知られているため、花蜜の酸度の低下は、蜜に含まれる糖類が酸に変換したことによると考えられる。この細菌により花蜜成分の変化は、蜜に棲む微生物が花形質を変化させていることを示唆している。 さらに、酵母を導入した際には、蜜の酸度の低下は見られなかったが、果実の中で成熟する種子の割合が低下していた。今回用いたMetschnikowia 属の酵母は、蜜で増殖する際にアミノ酸の成分などを変え、送粉者であるマルハナバチや寄生バチの行動などに影響を与えることが知られている。そのため、今回の実験においても、酵母の導入に伴い、花蜜に含まれるアミノ酸の組成が変わり、ヒサカキの主な送粉者であるキンバエやイエバエ、ニクバエなどの複数種の双翅目昆虫の行動が変化したことが推測される。 また、果実の中で成熟する種子の割合が多いほど、果実が大きくなることは以前の研究結果でも示されていたが、今回の実験でも同様の傾向を確認することができた。この果実の大きさは、鳥の果実の採餌とも関係している可能性があるため、現在解析を進めている。
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