2019 Fiscal Year Research-status Report
沖縄海域におけるザトウクジラの保全に向けた繁殖生態の解明
Project/Area Number |
19K16239
|
Research Institution | Okinawa Churashima Foundation |
Principal Investigator |
小林 希実 一般財団法人沖縄美ら島財団(総合研究センター), 総合研究センター 動物研究室, 研究員 (40774401)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | ザトウクジラ / 繁殖生態 / 沖縄 / 衛星発信器 / 回帰率 / 出産率 / 地域貢献 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、沖縄周辺海域に来遊するザトウクジラの基礎生態学的情報の拡充を目的に、同海域における本種の回帰率、出産率を算出する。更に衛星発信器を用いた繁殖時期の雌雄個体の情報収集を基に、本種の繁殖生態の解明を目指す。また研究結果を基に、ザトウクジラの繁殖活動への影響を最小限に抑えた、持続的な地元観光産業の体制作りを行う。以上により、本種の資源回復に向けた繁殖生態の解明と地域社会への貢献を目指す。 研究初年度である令和元年度は、沖縄県慶良間諸島、本部半島周辺の2海域でザトウクジラを対象とした調査を計52日間実施し、延べ1000頭について個体識別写真(尾びれ腹側写真)および各個体の発見位置情報、日時、群構成等のデータを収集した。また、5機の衛星発信器を5個体(雄4個体、雌1個体)に装着し、繁殖時期における本種の活動状況について約350時間分のデータを収集した。 また、1991-2018年の調査で蓄積された個体識別情報より、約1700個体分の来遊履歴を分析し、過去27年間における各個体の沖縄海域への回帰率を算出した。その結果、例年過半数を超える個体が過去に複数回、沖縄海域で確認されたことのある再識別個体であることが明らかになった。また、雌個体については、新生児を伴って確認された年を出産年として、各個体の出産履歴、出産率を算出した。その結果、沖縄海域では2-3年に一度出産する個体が多く、全体の約40%が同海域において複数回に亘り出産している可能性等が示唆された。これらの結果を基に、本研究課題の1つである「ザトウクジラの繁殖時期における沖縄海域の利用状況」についてまとめ、各結果について計2編の学術論文の執筆を開始した。更に、次年度の調査実施に向け、衛星発信器6機の購入と、位置データ収集に伴う無線局開設等の手続きを実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、調査の実施、個体情報の収集および衛星発信器の装着を実施することができ、回帰率、出産率に関する分析も進んでいることから、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の調査では、計5個体に対して衛星発信器を装着することに成功し、内1頭については、発信器が脱落した後の再確認および発信器脱落部位のその後の経過状況と影響評価についてもデータを収集した。また、発信器装着時には、過去の識別情報を基に、性別を随時判断した上で、雌雄個体それぞれを選別して発信器を装着することが十分に可能であることも確認できた。次年度は、今年度確立した手法を基に、新規購入予定の発信器6機の装着を試みると共に、より長期間のデータ収集を目標に調査を継続する。また、回帰率と出産率については、既に得られた分析結果をまとめ、学会発表および学術論文投稿による研究成果の公表を実施する。
|