2020 Fiscal Year Research-status Report
メダカオキシトシン遺伝子に着目した、配偶者防衛行動の神経基盤解析
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19K16247
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
横井 佐織 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (10772048)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | オキシトシン / シナプス刈り込み / メダカ / 社会性行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度に野生型個体と、オキシトシンとその受容体変異体の成魚脳から抽出したRNAを用いてトランスクリプトーム解析を行った結果、オス、メス両方の変異体においてc1qa, c1qb, c1qc全ての遺伝子発現が減少しており、オキシトシンとその受容体変異体における行動異常がシナプス刈り込み異常に伴う脳神経発達異常に起因する可能性が考えられた。そして、c1qはこれら3つのタンパク質によって3量体を形成すること、トランスクリプトーム解析の結果、成魚脳においてこれら3遺伝子のうち、c1qbの発現量が一番多く見受けられたことをうけ、c1qb遺伝子コード領域においてCRISPR/Cas9法による非相同末端修復由来のフレームシフトを誘導し、機能欠損させた個体を作製した。当該個体を用いて行動実験を行った結果、オキシトシンやその受容体変異体と同様に、メスにおいて見知ったオスに対する性的選好性を失っていた。一方、オスにおいてメスに対する性的モチベーションを検証した結果、オキシトシンやその受容体変異体のオスの結果とは異なり、初対面のメスに対しても、見知ったメスに対しても同程度の求愛行動を示した。したがって、オキシトシンシグナルは両性において親密度由来の性的選好性を制御すると考えられるが、その作用機序は性別によって異なり、メスではシナプス刈り込み異常に伴う脳神経発達異常に起因する可能性が高い一方で、オスではその可能性が低いということが考えられた。オキシトシンは哺乳類においてはオス、メスによらず親密度に基づく性的選好性を正に制御すると長年考えられてきたが、メダカでは親密度に基づく性的選好性に性差があるだけではなく、その制御方法にも性差が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はc1qbタンパク質の機能が欠失していることが期待される個体の作出に成功し、実際に当該変異体メスにおいて行動異常が検出された。オキシトシン変異体と同様の行動異常であることから、オキシトシンシグナル異常に伴うシナプス刈り込み異常が行動異常を引き起こす、という仮説が支持された。オスの求愛行動に関しては異常が検出されていないが、オキシトシンシグナルが社会性行動を制御するシステムに性差が存在することは近年注目されている現象の一つであり、重要な知見であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
c1qb変異体オスを用いて、見知らぬメスに対してと見知ったメスに対してとで配偶者防衛行動に違いが生じているかを検証する。配偶者防衛行動にはバソプレシンによって制御されるメスへの性的モチベーションが重要であるとの知見との関係性についても検証する。
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Causes of Carryover |
計画に沿って使用したが、若干残額が生じた。次年度に試薬の購入を計画している。
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