2019 Fiscal Year Research-status Report
アストロサイトSTAT3の新規制御機構とその病態生理学的役割の解明
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19K16260
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
白鳥 美穂 (林) 九州大学, 薬学研究院, 助教 (20735641)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 慢性掻痒 / 痒み / 脊髄 / アストロサイト / STAT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
IP3R1のshRNAを脊髄後角アストロサイト選択的に発現させたマウスに慢性掻痒モデルを作成した。その結果、慢性的な痒み行動及びアストロサイト活性化が抑制された。STAT3依存的に活性化アストロサイトで産生放出され、脊髄痒み過敏に関わるLCN2の発現増加も抑制された。一方で、アストロサイトに発現する他のIP3受容体であるIP3R2の欠損マウスではWTマウスと比較して慢性掻痒やLCN2の発現に変化は認められなかった。また、TRPCの阻害薬の髄腔内投与によって慢性掻痒及びLCN2発現が抑制された。これらの結果から、慢性掻痒時の脊髄後角におけるSTAT3依存的アストロサイト活性化にはIP3R1/TRPCが関与していることが示唆された。 これまでの初代培養アストロサイトを用いた検討からIP3R1/TRPCを介したアストロサイトSTAT3の長期的活性化を誘発する物質としてサイトカインの一種であるIL-6がわかっていた。今回、IL-6以外のある種のIL-6ファミリーサイトカインも同様にIP3R1/TRPCを介してSTAT3の長期的活性化を誘発することがわかった。しかしながら、ATPやグルタミン酸、神経傷害性の活性化アストロサイトを誘導するIL-1やTNF、C1qはSTAT3の長期的活性化を誘発しなかった。 蛍光カルシウムセンサーGCaMPを脊髄後角アストロサイト選択的に発現させたマウスの脊髄スライスを用いてカルシウムイメージングを行った。IL-6処置によって微弱で長期的な細胞内カルシウムイオン濃度の増加がIP3R2欠損マウスで認められた。これらの反応はIP3受容体やTRPCの阻害薬で抑制された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物モデルでアストロサイトSTAT3活性化に関わるカルシウム関連分子の関与を明らかにするとともに病態における役割も明らかにできたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今回病態モデルで同定したカルシウム関連分子がSTAT3依存的な活性化アストロサイトの遺伝子発現変化全体にどの程度影響を与えるのか検討する。また、IL-6によるカルシウム濃度増加に関わる分子メカニズムを明らかにする。
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Causes of Carryover |
第48回内藤コンファレンス参加費用が当初の予定よりも安価であったため次年度使用額が生じた。 当該額は次年度の実験動物購入費用に使用する予定である。
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