2020 Fiscal Year Research-status Report
経験が報酬刺激物質に対する嗜好性を変化させる機構の解明
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19K16265
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
市之瀬 敏晴 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (20774748)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 報酬刺激物質 / ショウジョウバエ / ドーパミン / D1受容体 / ゲノム編集 / 記憶学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
多くの哺乳類にとってアルコールは毒であるが、我々ヒトは例外的にアルコールが好きな種といえる。自然界においてアルコールは主に発酵した果実に存在し、人類の酒好きは果実食とともに進化したと言われている。遺伝学モデルとして有名なショウジョウバエは果実を主食とし、昆虫の中では例外的にアルコールをよく好み、アルコールの摂取量が日に日に増大することが知られている。そこで本研究ではショウジョウバエをモデルにアルコール摂取がもたらす行動変化の神経メカニズムの解明を目的とした。D1型ドーパミンの受容体は報酬刺激を受け取りし、ショウジョウバエでも報酬学習に必須であることが知られている。ゲノム編集技術を使って脳内のD1ドーパミン受容体を可視化し、アルコールを自由に繰り返し飲んだハエとアルコールを与えられなかったハエで脳内の受容体の量を比較した。その結果、アルコールの繰り返し摂取によりD1ドーパミン受容体が増大することが判明した。さらに、ドーパミンの放出の阻害、もしくはD1ドーパミン受容体遺伝子の破壊を行なったところ、野生型で見られたアルコール摂取量の増大が観察されなかった。また人工的にD1ドーパミン受容体の量を増大させたところ、通常のハエに比べて異常にアルコールを摂取するようになることが観察された。以上の結果から、アルコールの反復摂取によりD1ドーパミン受容体が増大し、経験依存的なアルコール摂取の増大を引き起こすメカニズムが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルコール摂取量の調節メカニズム、その経験依存的な変化を明らかにすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、アルコールの反復摂取により、どのようなメカニズムでD1受容体量が変化するのか解明したい。また、研究の過程で、アルコールやその他の薬物の摂取を逆に抑制するドーパミン受容体を見つけることができた。二つの受容体による異なる制御がどのように相互作用するか、検討したい。
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Causes of Carryover |
脳画像撮影装置に予期しない不具合が生じたため一部の実験を延期した。予定された実験計画は繰越予算を使って次年度に実施する。
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Research Products
(3 results)