2019 Fiscal Year Research-status Report
視線保持機構における神経積分器と前庭小脳との結合関係の解明
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19K16295
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
杉村 岳俊 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (60812526)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 舌下神経前位核 / 視線保持 / 片葉 / 虫部垂 / 小節 / コリン作動性ニューロン |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚を適切に働かせるには視線を保持することで視覚対象を網膜上で静止させる必要がある。視線保持には神経積分器と呼ばれる舌下神経前位核(PHN)やカハール間質核(INC)と前庭小脳との神経ネットワークが重要であると考えられているが、その詳細は不明である。本研究では、前庭小脳へ投射するPHNやINCのニューロン・神経回路特性を明らかにすることを目指している。小脳の機能はコリン作動性入力によって調節され、PHNはそれらの主要なソースの一つとして知られているが、PHNから小脳への投射におけるコリン作動性入力の割合は定量的に解析されていない。そこで本年度は、コリン作動性ニューロンが蛍光標識されたトランスジェニックラット(ChAT-tdTomato)を用いて、4つの異なる小脳の領域(片葉、虫部垂・小節、前葉虫部、後葉半球部)に投射するPHNのニューロンを逆行性トレーシングにより特定し、それぞれコリン作動性ニューロンの割合を求めて比較した。PHN-片葉投射ニューロンにおけるコリン作動性ニューロンの割合は、虫部垂・小節または前葉虫部、後葉半球部に投射するPHNのニューロンにおけるコリン作動性ニューロンの割合よりも有意に小さかった。また、虫部垂・小節または前葉虫部、後葉半球部に投射するPHNのニューロンにおけるコリン作動性ニューロンの割合は、PHNの吻側尾側の位置に依存して異なった。以上の結果より、PHN-小脳投射ニューロンにおけるコリン作動性ニューロンの割合は、小脳への投射エリアとPHNの吻側尾側の位置に依存して異なることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の結果より、PHN-小脳投射ニューロンにおけるコリン作動性ニューロンの割合は、小脳への投射エリアとPHNの吻側尾側の位置に依存して異なることが示され、本研究課題の重要なテーマの一つを明らかにすることができた。この成果は、10月に開催された北米神経科学学会(Neuroscience 2019)で発表した。以上のことから、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は水平性視線保持に関与するPHNと前庭小脳との結合関係を明らかにした。今後はさらにアデノ随伴ウイルスを用いた形態学的手法も適用して、もう一つの重要なテーマである垂直性視線保持に関与するINCと前庭小脳との結合関係を明らかにする実験を行う。
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Causes of Carryover |
本年度の結果から想定以上に形態学的な研究の発展が見込める状況となり、研究計画を一部練り直した。当初計画していた研究機器の購入を止め、次年度の実験で使用するアデノ随伴ウイルス等の購入にその経費を使用するため、次年度使用額が生じた。
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Research Products
(3 results)