2019 Fiscal Year Research-status Report
視床下部ニューロテンシン神経が司る覚醒機構の重要性
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19K16296
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
長沼 史登 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (80780519)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ニューロテンシン / 睡眠覚醒 / オプトジェネティクス / in vivo カルシウムイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、覚醒維持・遷移に重要である視床下部ニューロテンシン(Nts)神経細胞について、その神経回路と機能を明らかにすることが目的である。方法は、順行感染型AAVにより、光受容体(ChR2)、およびカルシウムセンサー(GCaMP6)をマウス視床下部Nts神経細胞全体に発現させる。次にChR2を投射先脳部位でのみ光刺激し、それに伴う睡眠覚醒への影響を検討する。併せて投射先脳部位でのGCaMP6を用いたin vivoカルシウムイメージングにて、睡眠覚醒中の神経繊維の発火パターンを検討する。 今年度はNts神経細胞特異的にCreが発現するNts-Creマウスの繁殖ラインを確保した。次に、標的となる投射先脳部位を同定するため、Cre依存的にmCherryを発現するAAV-DIO-mCherryをNts-Creマウスの視床下部片側に微量注入し、視床下部Nts神経特異的にmCherryを発現させた。1ヶ月後マウス脳凍結切片を作成し、免疫染色法によりNts神経繊維の脳内分布を検討した。その結果、神経繊維が分界条床核、腹側外側視索前野、腹側被蓋野、腹側外側中脳水道周囲灰白質、青斑核、腕傍核で確認され、先行研究より詳細な投射先脳部位が同定された。次に、オプトジェネティクスの実験環境を整備した。青色LED光源、光ファイバーを購入し、パルス制御により光刺激の条件を調節できる系を構築した。マウス脳内に挿入するカニューラを作成し、カニューラ先端から光刺激に十分な光の強さ(>2 mW)が得られることを光パワーメーターで確認した。最後に、Cre依存的にChR2を発現するAAV-DIO-ChR2を視床下部に打ち込み、自作カニューラを視床下部に挿入、また脳波筋電図測定用電極をNts-Creマウスに埋め込んだ。埋め込みから三週間後、目的脳部位で光刺激が行えること、また同時に脳波筋電図測定が行えることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度中に、Nts-Creマウスの繁殖ラインを確保した。さらに投射先を検討した結果、分界条床核、腹側外側視索前野、腹側被蓋野、腹側外側中脳水道周囲灰白質、青斑核、腕傍核といった視床下部Nts神経細胞の投射先がこれまでの先行研究よりも詳細に明らかになったため、実際に機能を観察する標的脳部位が確定した。これに加え、AAVの微量注入法、オプトジェネティクスの実験機器の整備、カニューラ作成法、埋め込み法、光刺激の条件検討などについても確立することができた。実際にマウスの脳波筋電図を測定をしながら、標的部位に光刺激を行える一連の研究体制が整ったので、初年度の進捗状況としては順調であると考えられる。ただ、今年度中にGCaMP6を用いたin vivoカルシウムイメージングの実験環境についても整備を終えたかったため、一部研究計画からは遅れが生じている。しかしながら、これらについては注入するAAVの種類をAAV-DIO-GCaMP6に変更(AAV購入済)、イメージングファイバーのためのカニューラの径の変更、測定機器を変更することのみが課題であるが、必要なLED光源等一部の機器、または手術等の手技はオプトジェネティクスとほぼ同様であるため、条件検討自体は比較的早い段階で開始することができる。そのため、来年度の早い段階でin vivoカルシウムイメージング法のセットアップも完了出来ると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、繁殖ラインを確保したNts-CreマウスにAAV-DIO-ChR2を視床下部に打ち込み、Cre依存的にChR2視床下部Nts神経細胞特異的に発現させる。その後、今年度で関連が示唆された投射先脳部位にカニューラを挿入し、投射先脳部位のみでNts神経細胞を活性化する。同時に脳波筋電図を測定し、投射先脳部位でのNts神経細胞の興奮が、睡眠覚醒にどのような影響を与えるのかについて検討し、視床下部Nts神経細胞の投射先での実際の機能について明らかにする。 さらに、今年度の課題として残してしまったGCaMP6のin vivoカルシウムイメージングの実験設備をまずは来年度の早い段階で整備することが急務である。オプトジェネティクスの実験同様、研究環境の整備後に条件検討を行う。条件検討の方法として、まず視床下部Nts神経細胞にCre依存的にGCaMP6を発現させ、イメージングファイバーを視床下部に挿入し、視床下部Nts神経細胞の神経活動を観察する。同時に脳波筋電図を測定することにより、睡眠覚醒の維持または遷移の状態で視床下部Nts神経細胞の発火パターンを明らかにする。視床下部でのカルシウムイメージングの実験条件が確立できた後、実際の投射先でのカルシウムイメージングを実施する。 上記オプトジェネティクスとin vivoカルシウムイメージングで得られた結果により、視床下部Nts神経細胞の投射先での機能と働きが明らかになることで視床下部Nts神経細胞を中心とした新たな覚醒制御神経回路が明確になると考えられる。
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Research Products
(1 results)