2019 Fiscal Year Research-status Report
性フェロモンにより誘起される生殖内分泌・性行動の神経回路解明
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19K16304
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
梶山 十和子 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (00757130)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 性フェロモン / 視床下部 / 性行動 / 生殖内分泌 / ゼブラフィッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
ゼブラフィッシュをモデルとし、性フェロモンに着目し、嗅覚の入力から行動発現・内分泌変化という出力に至る一連の神経回路を包括的に解明することを目的として研究を行った。 この目的のため、本年度はまず、性フェロモン17α,20β-ジヒドロキシ-4-プレグネン-3-オン(17,20β-PS)の嗅覚受容体の同定を行った。17,20β-PSの受容体の候補遺伝子から、ルシフェラーゼアッセイにより、17,20β-PSに応答する1つの嗅覚受容体を明らかにした。また、この受容体と、類似した受容体の二重in situ hybridizationを行い、この受容体と類似したリガンド不明の受容体が、同一の嗅細胞で発現していること明らかにした。そこで、これらの二つの受容体の遺伝子ノックアウトを行い、ダブルノックアウトフィッシュの系統を新たに確立することができた。また、このダブルノックアウトフィッシュの表現型解析をするために、性行動のアッセイの系を確立した。さらに、17,20β-PSがゼブラフィッシュにとって好ましい匂いなのかどうかを行動実験により確認した。これらの成果は、性フェロモンがどのような神経回路により行動発現・内分泌変化をもたらすのかを明らかにするための重要な土台となるものである。 また、性フェロモンにより活性化される脳内の神経回路を明らかにするためのツールとして、ゼブラフィッシュ脳内の神経ペプチド発現アトラスの作成を行った。具体的には、ゼブラフィッシュ脳内で発現する神経ペプチドの発現場所をin situ hybridizationにより網羅的に調べ、脳の部位ごとにまとめたアトラスの作成を進めた。本年度は、利用しやすいアトラスを作成するためのデータのとりまとめを行い、論文投稿準備を行った。本アトラスは、公開されたのちにはゼブラフィッシュを用いた神経科学研究に広く貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
性フェロモン17,20β-PSに着目して研究を行った。本年度は研究の土台となる17,20β-PSの受容体同定、受容体ノックアウトフィッシュの作製を完了することができたため、おおむね順調に進んでいるとした。また、このノックアウトフィッシュの表現型解析にも着手した。ただし現在の所、性行動や生殖内分泌における表現型は見いだせていないため、来年度以降の課題としたい。また、並行してゼブラフィッシュ脳内の神経ペプチド発現アトラスの作成を行い、データの解析を進め、論文投稿準備まで至ることができた。そのためこちらの内容についてもおおむね順調に進んでいるとした。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は今年度作製した17,20β-PSのダブルノックアウトフィッシュの表現型解析を進めたい。そのために性行動のアッセイや、誘引行動のアッセイなど様々な解析を行い、ノックアウトによりゼブラフィッシュの行動にどのような変化が起こるのかを調べる。また、内分泌においても、ノックアウトフィッシュにおいてホルモン分泌や、生殖状態に変化が起きていないかを確かめる。 また、性フェロモンによって活性化される神経回路の解明に向けて、脳内の神経活動を解析するツールの開発も同時に進めたい。はじめに今年度に投稿準備を進めた神経ペプチド発現アトラスを完成させ、投稿を行う。また、ゼブラフィッシュ成魚の脳内でカルシウムインジケーターGCaMPを発現するトランスジェニックフィッシュの作製を進める。こちらは今年度までに試した複数系統では、性フェロモンへの脳内の応答が確認できていないことが課題となっており、まだ試していない新しい系統を試すことが必要である。現在進めている新しい系統の作製を来年度以降も続ける予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、妊娠のため体調が悪い期間が長く、その期間は学会参加などが難しく旅費が少なくなった。また、物品費については、今年度に予備実験で色々と行っていた行動実験で本実験に進めるような結果が得られなかったため、実験の個体数が当初の想定よりも少なくなったことから出費が少なくなった。次年度以降に本実験に進みたいため、そこでまとまった物品費の出費が見込まれる。また、次年度に論文投稿を予定しているため、英文校正、投稿料などの出費も見込まれる。
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Research Products
(1 results)