2019 Fiscal Year Research-status Report
非抗菌的感染症治療薬創製を指向したT3SS阻害活性を示す天然有機化合物の合成研究
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19K16318
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
野口 吉彦 北里大学, 感染制御科学府, 特任助教 (00758170)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 非抗菌的感染症治療薬 / 感染防御薬 / III型分泌装置 / 収束的全合成 / カスケード反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
病原性細菌の感染機構や病原性発現機構を標的とした薬剤は、抗菌活性を示さない新たな感染症治療薬になると期待される。北里生命科学研究所では新たな創薬標的として、グラム陰性病原性細菌に特徴的な病原因子移行システム「III型分泌装置(T3SS)」に着目し、微生物培養液からT3SSを阻害する化合物の探索を行ってきた。その結果、オーロドックス類が新たにT3SS阻害活性を示すことを見出した。応募者は本化合物群の構造及び活性に注目し、オーロドックス類の収束的全合成を確立ならびに全合成手法を用いて重要なファーマコフォアの探索や抗菌活性とT3SS阻害活性の分離の検証を行い、新たな感染防御薬の創製を指向する。 当該年度では、オーロドックスの全合成に重要な各部分骨格の合成に注力し、3つの部分骨格の内、2つの合成を完了した。今後は残り1つの部分骨格の合成を完了するとともに、オーロドックスの全合成を目指し、合成を進める。本研究で確立した各部分骨格の構築法は誘導体合成に応用しやすいルートであるため、オーロドックスの全合成を達成できれば、同様の方法で全合成からでしか得られない非天然型誘導体を活性評価に供給することが可能となる。加えて、新たな高T3SS阻害活性化合物を見出せれば、in vivo試験や標的タンパク質との共結晶構造解析など創薬研究に展開し、感染症治療薬開発における新たな薬剤標的を見出す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は各フラグメントの合成と供給を試みた。ジエノンの含むピリドン骨格はワインレブアミドに対するピリドン求核剤の付加により得られると考えた。そこで、対応する化合物を合成した後、1,2-付加の検討を行った結果、ジエノンの含むピリドン骨格を中程度の収率で得ることができことから、次に本合成ルートを用いて、化合物の供給を試みている。 一方、ヘミアセタール骨格は、ブロモ体から調製されるスルフォニルイリドとジエンを含むアルデヒドを用いた不斉コーリーチャイコフスキー反応により、一挙にエポキシドを構築する合成ルートを計画し、検討を行った。しかし基質の調製が困難であったことから、合成ルートの変更を行った。即ち先の計画により得られる中間体を用いて、HWE反応及びVO(acac)2触媒によるSharplessジアステレオ選択的エポキシ化を行い鎖状前駆体と変換した。得られた鎖状中間体より変換することで目的とするヘミアセタール骨格の構築を達成している。課題として環化の際、28位立体のエピ化が確認されたことから反応条件の最適化を行う。 6連続不斉中心を有するテトラヒドロフラン体はプロパルギルメシラートと共役アルデヒドより立体選択的アレニル付加により望みの立体を有する化合物を良好な光学純度で得ている。現在、アルキン部分を介した変換を試みている。 今後はジアステレオ選択的求核付加により、アリルアルコール体に導くこととした。続く新規カスケード反応(①アリルアルコールの酸化によりエノンを生じ、②Oxa-Michael反応によるテトラヒドロフランとエノラートの形成、③生じたエノラートのTf化)によりテトラヒドロフラン体を得る。1工程での変換が困難であった場合、生じたエノラートのシリル化後、ビニルトリフラートへの変換することで問題を解決できる。
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Strategy for Future Research Activity |
先に示したように、残されたテトラヒドロフランを含む部分骨格の構築を進める。そして合成した各部分骨格を檜山カップリングおよびアミド化により連結することで、全炭素骨格を備えた前駆体へ変換する。不安定と予想されるヘミアセタール骨格は、新たに設計したカスケード反応により最終工程で一挙に構築する。本反応はエポキシドの剛直性を鍵としている。即ち29位をケトンに酸化することで30位の求電子性が上がり、水分子が位置選択的にエポキシドを開環する。そして分子の自由度が増し、33位水酸基からの分子内ヘミアセタール化が進行、オーロドックスが得られると考えた。カスケード反応が困難であった場合、5から得られるヘミアセタール体と14を縮合することで解決する。全合成を確立することで天然由来オーロドックスからでは合成できないピリドン環を変換した誘導体や18位メチル基等を欠損した誘導体を合成、活性評価に提出し、構造活性相関の解明を行っていく。 病原性細菌の感染機構や病原性発現機構を標的とした薬剤は、抗菌活性を示さない新たな感染症治療薬になると期待される。北里生命科学研究所では新たな創薬標的として、グラム陰性病原性細菌に特徴的な病原因子移行システム「III型分泌装置(T3SS)」に着目し、微生物培養液からT3SSを阻害する化合物の探索を行ってきた。その結果、オーロドックス類が新たにT3SS阻害活性を示すことを見出した。応募者は本化合物群の構造及び活性に注目し、オーロドックス類の収束的全合成を確立ならびに全合成手法を用いて重要なファーマコフォアの探索や抗菌活性とT3SS阻害活性の分離の検証を行い、新たな感染防御薬の創製を指向する。
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Research Products
(15 results)