2019 Fiscal Year Research-status Report
真菌由来化合物ダイナピノンAが示す中性脂質分解促進活性の作用機序解析
Project/Area Number |
19K16320
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
小林 啓介 北里大学, 薬学部, 助教 (80794734)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中性脂質 / ケミカルバイオロジー / 標的分子 / プロテオミクス |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞内中性脂質蓄積阻害剤である真菌由来化合物ダイナピノンA (DPA) は、2つの軸異性体 (DPA1, M体とDPA2, P体) の1:1の混合物 (DPAmix) が最大の活性を示すというこれまでに前例のない生物活性を示す。本研究では、DPAの作用機序を解明するために、標的分子がタンパク質であると想定し、以下の2つの方法でDPA結合タンパク質の探索を行った。 1) DPAのケミカルプローブを用いた方法:DPA1とDPA2それぞれのケミカルプローブを合成 (Angew. Chem. Int. Ed.Engl. 44, 3559 (2005) の手法を利用)し、細胞抽出液と反応後、電気泳動により、それぞれのプローブに特異的に検出されるバンド (タンパク質) を探索した。その結果、DPA1およびDPA2両プローブに結合するタンパク質として、脂肪滴膜での存在が報告されているタンパク質 (Rab18やperoxiredoxin-1など) を見出した。 2) DPAのプローブ化を必要としない手法:Cellular Thermal Shift Assay (CETSA, Science 341, 84 (2013) の手法) を応用し、DPA1、DPA2およびDPAmixそれぞれを用いた結合タンパク質の探索を行った。その結果、DPAmix処理により顕著にバンドパターンが変化したものとして、タンパク質を5つ見出した。 3) 並行して、微生物資源より中性脂質代謝を制御する化合物を探索し、中性脂質の一つであるコレステリルエステル蓄積阻害剤として新規化合物を4種見出した。これらについては論文投稿準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ダイナピノンA (DPA) の一番の特色は、2つの軸異性体 (DPA1, M体とDPA2, P体) の1:1の混合物 (DPAmix) が最大の活性を示すという点である。1) DPA1とDPA2の標的分子がそれぞれ異なる場合、2) DPA1とDPA2の標的分子は同一でその結合部位が異なる場合、3) DPA1とDPA2が溶液中で何らかの複合体を形成して作用している場合等が考えられる。そのため、本年度は、DPA1およびDPA2それぞれに結合するタンパク質、DPAmixに結合するタンパク質を2つの手法でそれぞれ探索した。その結果、脂質代謝や脂肪滴 (中性脂質の細胞内貯蔵器官) の形成に関与する結合タンパク質も取得できており、研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
得られた結合タンパク質が、DPAの生物活性に関係する標的分子なのかを明らかにする必要がある。脂質代謝との関連性が高い候補タンパク質から優先して解析を行う。低分子RNA (siRNA) を用いて、結合タンパク質をノックダウンし、その細胞内の中性脂質代謝の変化や、ノックダウン細胞にDPAを処理させて際の表現型の変化を検証する。DPA1とDPA2の標的分子がそれぞれ異なる場合は、いずれかの結合タンパク質をノックダウンした細胞、両者をノックダウンした細胞をそれぞれ用意し比較検討することで、軸異性体の混合で生物活性が増強する推定する。標的と予想されたタンパク質については、細胞からの精製や、異種発現系を用いた発現と生成により、酵素活性の測定、ビアコアを用いたDPAとの結合様式の解析を行う。
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Causes of Carryover |
研究計画では超微量分光光度計の購入を予定していたが、研究進捗状況にともない、放射標識体や抗体試薬の購入を優先し研究費を使用したため当該助成金が生じた。本金は、翌年度の機器購入や、研究進捗状況に応じた消耗品試薬等の購入、論文投稿のための英文構成費や投稿費に充足したいと考えている。
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