2020 Fiscal Year Research-status Report
アズレンを有するN,N-ジアリール型芳香族アミドの立体構造と環境応答
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19K16323
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
伊藤 愛 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (00353491)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アズレン / アミドの立体優先性 / 結晶構造 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質の構成要素でもあるアミドの相互変換に着目し、芳香族アミド化合物の立体構造特性に基づく分子の立体構造の予測・制御を目指し、5員環側が負の、7員環側が正の性質を示す特異な電子状態を有するアズレンを組み込んだN-アリール型アミドの立体構造特性を明らかにすることを目的としている。 前年度の検討により、溶液中にアズレンを有するN,N-ジアリール型芳香族アミドの立体優先性は、ベンゼン環のような6員環構造を有する一般的なN,N-ジアリール型アミドとは異なった挙動を示すことがわかった。 本年度は、アズレンを有するN,N-ジアリール型芳香族アミドの立体構造特性について検討するため、計算化学による解析と前年度に引き続き、単結晶を用いたX線構造解析を主として行った。また、N-メチル型の一部の化合物については、合成ルートの検討を行った。 分子軌道計算を用いて、アズレンを有するN,N-ジアリール型芳香族アミドの安定構造を算出した結果、これらの立体優先性は、2-N-アズレニル体はカルボニル側、6-N-アズレニル体はカルボニルと反対に位置した立体が優先し、NMRスペクトル測定により解析した溶液中における傾向と一致することがわかった。また、それぞれのE/Zコンフォマーの立体構造は、X線結晶解析から得られた構造特性とも良い相関を示し、アミド窒素上に位置する芳香環の大きさの違いによりカルボニル周辺の立体環境が大きく異なることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、COVID-19感染症拡大防止に伴い研究活動が大幅に制限されたため、当初の計画に遅れがでている。これまでに合成したアズレンを有するN,N-ジアリール型芳香族アミドのうち一部の化合物については、結晶構造を得、固体中の立体構造について解析した。さらに置換位置の異なるN-アズレニルアミド体の安定構造について分子軌道計算を用いて算出し、いくつかのN-メチル型アミドについては、合成検討を行った。今後、酸などの環境応答に対する立体構造変換について検討するとともに、これらの結果を基に一般則確立に向けた考察を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた解析結果を基に、アズレンを有するアミド化合物の一般的な傾向を解析する。さらに、合成した化合物の酸などの外部環境への応答性についてNMRスペクトル等を用いて解析する。
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Causes of Carryover |
本年度はCOVID-19感染症拡大に防止に伴う研究活動の制限により、試薬額や溶媒類の消費量が当初の見込みより少なく、また、学会等に参加できなかったため、次年度使用額が生じた。 次年度の実験に必要な消耗品の購入に使用する。
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