2019 Fiscal Year Research-status Report
キノン誘導体の新規活性化法に基づく官能基化芳香族化合物の合成
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19K16328
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
上田中 徹 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 助教 (70783794)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | キノンモノアセタール / ジヒドロベンゾフラン / オキソニウム / ビニルエーテル / インドール / カップリング |
Outline of Annual Research Achievements |
高度に官能基化された芳香族化合物は生物活性天然物や医薬品、機能性材料などに見られる骨格である。その合成法は世界中の様々な研究グループによって開発されているが、遷移金属触媒を用いる手法が多く、反応終了後に金属廃棄物を排出するなどの改善点が存在する。近年では金属を必要としない酸化的手法も報告されているが、反応性の制御が難しく、天然物などの複雑な骨格を有する化合物の合成への適用は難しい。 このような背景下、代表者らはこれまでキノンモノアセタール(QMA)への位置選択的求核種導入による高度に官能基化された芳香族化合物の合成を開発し、様々な骨格の構築に成功してきた。しかし、反応の進行には酸の添加が必要であり、酸性条件下で不安定な基質の適用は難しかった。この問題を解決すべく、2019年度はQMAの活性化法について精査した。その結果、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)中で特定の塩を添加すると中性条件下でQMAが活性化され、高活性なオキソニウム中間体が効率的に生成する新規反応条件を見出した。本活性化法の発見により酸に不安定な求核種の一種であるビニルエーテル類の導入が可能となり、2位が酸素化されたジヒドロベンゾフラン類を得ることができた。 また、2019年度はQMAのカルボニル基がイミノ基に置き換わったイミノキノンモノアセタール類への求核種導入も検討した。種々検討した結果、イミノ基の隣に位置選択的に活性メチレン化合物を導入し、オルト位が官能基化されたアニリン類を合成できる新規反応を見出した。本反応で得られた生成物の構造的特徴を活かし、高度に官能基化されたインドール類へ一段階で変換可能である。 上記の2反応で得られる骨格は生物活性天然物や医薬品などの基本骨格として含まれるだけでなく、様々な機能性化合物の合成前駆体として用いられており、今後そのような有用物質の合成への適用が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した中性条件下でのQMAへの求核種導入法、およびイミノキノンモノアセタールへの位置選択的求核種導入法、共に開発に成功し、その汎用性についてある程度検討できている。また、研究成果の公表に関しても国内学会および国際学会で報告するなど順調に行えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2019年度に得られた結果を基にして以下の通り研究を遂行する。 まず、中性条件下での反応について反応機構や添加する塩の効果を明らかにし、得られた知見を参考にして本反応の展開を試みる。現段階では、酸性条件下で不安定な求核種としてビニルエーテル類を用いて検討し、良い結果を得ることに成功している。しかし、例えばエナミンなどは非常に分解が速く、反応条件の更なる改良が必要である。そこで、今後はエナミンの導入可能な反応条件を精査し、汎用性の拡大に努める。また、塩基性を有する求核種、例えばアニリン類は酸性条件下では酸塩基反応によって不活性化されるためこれまでの手法では用いることができなかった。そこで、本研究で開発された中性条件下での反応を基に反応条件を設計し、塩基性を有する求核種との反応が可能な反応へと展開を試みる。 イミノキノンモノアセタールの反応については、2019年度の段階で反応条件や汎用性の検討が十分に行えている。今後は、本反応を繰り返し行うことで多置換アニリン類および多置換インドール類の位置選択的合成法へと展開する。 上記の通り、開発した新規反応の汎用性の拡大を今後行う。それに加えて、上記反応で得られる生成物の骨格に着目し、生物活性天然物や医薬品などの有用物質の合成を検討する。
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Causes of Carryover |
参加予定であった学会が天候や新型ウイルスの影響により開催中止となったため、旅費の使用額が少なくなった。 次年度使用額に関しては、主に次年度開催される学会等への参加費および旅費として使用する。次年度も新型ウイルスの影響により開催中止となる学会が多い場合は、状況に応じて適切な使用方法を考え、速やかな執行を心がける。
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Research Products
(7 results)