2021 Fiscal Year Research-status Report
ペプチド構造を有する環状ジヌクレオチド等価体を利用した創薬研究
Project/Area Number |
19K16333
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
辻 厳一郎 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 主任研究官 (90786196)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 環状ジヌクレオチド / c-di-GMP / バイオフィルム / STING / ペプチド / ケミカルバイオロジー |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、環状ジヌクレオチド(CDN)の生体内における重要な機能が明らかになってきており、病原菌が産生するバイオフィルムの形成阻害作用のほか、哺乳類の免疫に関与するタンパク質(STING)に結合することでインターフェロンを誘導する作用があることが報告されている。CDN誘導体を医薬品として機能させるためには、生体内での分解酵素への耐性獲得や細胞膜透過性の改善などが必要である。しかしながら、従来の骨格構造を用いた合成法では、多種多様な誘導体の迅速な合成を行うこと は困難であり、上記の要件を満たすようなCDN誘導体の合成は報告されていない。そこで本申請研究では、新規CDN誘導体の合成とその機能解明を目的としている。天然の骨格構造とは異なる、アミン分子を基本骨格としたCDN誘導体を合成し、その物性や生理活性などの機能評価を行った。このアミン分子を基本骨格とした合成方法を用いることで、多種の誘導体への構造展開が可能であることがわかった。合成したアミン骨格を有するCDN誘導体について、STINGとの相互作用解析として、レポータージーンアッセイによってSTINGへの結合を介したインターフェロン誘導活性を評価した。評価の結果、いくつかの化合物において、天然のリガンドである2’,3’-cGAMPと比較して弱いものの、STINGに対するアゴニスト活性、もしくはアンタゴニスト活性を示すことが確認された。また、いくつかの誘導体は2’,3’-cGAMPと比較して細胞膜透過性が高いことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究において開発したアミン骨格を有するCDN誘導体のいくつかが、免疫関連タンパク質STINGに対して活性化作用もしくは阻害活性を示すことを見出しており、現在、学術誌への投稿準備中である。 また、本研究において対象としている環状ジヌクレオチド等価体とは異なるものの、黄色ブドウ球菌およびMRSAのバイオフィルム形成を阻害する分子をスクリーニングによって見出すことができ、研究成果を学術誌へ投稿した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究において開発したアミン骨格を基盤としたCDN分子のうち、いくつかの誘導体は天然型のCDN分子と同様に免疫関連タンパク質であるSTINGに結合してインターフェロンを誘導することが示唆された。 今後は活性を示した化合物に関して、さらなる構造活性相関を行うことでより高活性な化合物の探索を行う。またインシリコスクリーニングで見出されたSTINGリガンドについてもインターフェロン誘導活性評価を行う。
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Causes of Carryover |
前年度の研究活動についてはこれまでに開発していた分子を用い、所属する研究室にすでにあった装置・器具にて評価等を実施することができた。また学会での発表において、新型コロナウイルスによる影響で、学会がオンライン開催となる事案が生じた。これにより、本来支出を見込んでいた研究費や旅費等において未使用分が生じることとなった。この差額に関しては、今年度における研究活動において、より優れた成果を出すための費用として使用するために繰り越しを決定した。
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