2019 Fiscal Year Research-status Report
NMRを用いた分子状態評価に基づく薬物濃縮相形成型固体分散体製剤の開発
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19K16334
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
植田 圭祐 千葉大学, 大学院薬学研究院, 助教 (40755972)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 固体分散体 / 非晶質 / 固体NMR / 溶出試験 / 相分離 / 分子間相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和1年度は固体分散体からの薬物溶出改善メカニズムの解明を目的とし、固体NMRを用いた固体分散体の物性評価及び溶出試験を行った。Hypromellose(HPMC)、二種のメタクリル酸系ポリマー(Eudragit S; EUD-S, Eudragit L; EUD-L)及びそれら混合ポリマーを用いた各種固体分散体を噴霧乾燥法により調製し、固体NMR測定を行った。その結果、Carbonyl基を有するメタクリル酸系ポリマーを用いた固体分散体では薬物及びポリマー間に強い分子間相互作用の形成が認められた。一方、HPMCを用いた固体分散体では薬物及びポリマーが数nmスケールで混和していることが示された一方、薬物及びポリマー間の分子間相互作用は比較的弱いことが示された。固体分散体からの薬物溶出速度を回転ディスク法により定量的に評価した結果、HPMCを用いた固体分散体では吸水時に薬物の相分離が認められ、薬物溶出性に改善が認められなかった。一方、比較的強い分子間相互作用の形成が認められた薬物/EUD-S固体分散体では薬物の溶出がポリマーにより制御され、薬物溶出性が顕著に改善することが示された。しかし、EUD-Sと比較してより強い薬物との分子間相互作用形成が認められたEUD-Lを用いた固体分散体では薬物が溶出前に相分離を起こし、溶出性の改善が認められなかった。各種固体分散体について動的水分吸着測定を行った結果、カルボン酸をより多く有するEUD-Lを用いた固体分散体はEUD-Sを用いた固体分散体と比較して吸水性が高く、この高い吸水性が溶出時の薬物相分離を促進したと考察した。以上の結果より、難水溶性薬物の効果的な溶出改善には、薬物及びポリマー間の分子間相互作用形成及びポリマー物性に依存した固体分散体の吸水性を制御することが重要であると結論付けた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した分子状態評価に基づく、固体分散体からの薬物溶出改善メカニズム解明まで終えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は薬物濃縮相安定化メカニズムの解明をNMR及びCryo-TEMを中心とした物性評価を用いて検討する予定である。
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