2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of structural perturbation of proteins at air-water interface by protein foam assay
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19K16335
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鳥巣 哲生 大阪大学, 工学研究科, 助教 (10730492)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 医薬品 / 構造解析 / 質量分析 / タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
気液界面でのタンパク質の変性を原因とするタンパク質の凝集が、バイオ医薬品の溶液製剤開発において課題となっている。本研究では、タンパク質凝集の抑制を目指し、新規評価系である水素重水素交換質量分析(HDX-MS)を用いたタンパク質泡気液界面評価系を確立するとともに、実際に医薬品としても利用されているヒト血清アルブミン(HSA)について界面での構造変化を解析した。 タンパク質泡気液界面評価系の確立については、はじめに、利用可能な複数の泡化手法について比較検討し、ディフューザーを用いた泡化手法を選択した。その後、HDX-MS 測定で十分な重水素化時間を確保するため、溶液条件(HSA の濃度、緩衝液の種類及び濃度、添加剤、pH )について統計的手法を用いて最適化し、泡の持続時間を最大化した。次に、最適化したタンパク質泡気液界面評価系を用いてHSAの界面での構造変化について解析を行い、溶液状態(多くの分子が界面以外に存在する状態)と比較して泡状態(多くの分子が界面に存在する状態)で重水素取り込み量が増加する領域と重水素取り込みが減少する領域を特定した。重水素取り込みが増加した領域は界面での変性に伴って露出すると考えられた。また、界面ではHSA分子が並んだ状態で存在していると考えられるため、重水素の取り込みが減少した領域は、HSA分子が界面に並ぶ際の相互作用部位である可能性がある。 今後、これまでに得られた結果の妥当性を検証するために、界面活性剤等を用いた実験を行っていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、タンパク質凝集の抑制への応用を目指し、タンパク質の界面変性について詳細な構造解析を行っている。 研究の計画は大きく1)新規評価系の確立、2)モデルタンパク質を用いた界面変性の構造解析、3)2で得られた結果の検証および考察、の3つに分けられる。 界面での構造解析については、これまでに適切な評価系がなかったことから、はじめに新規評価系の立ち上げを行った。新規評価系はタンパク質の泡化とHDX-MSを組み合わせた評価系であり、それらを組み合わせるために泡化の条件について種々検討を行った。続いて、HSAを医療用タンパク質の例として、確立した評価系で分析を行い、HSAの界面変性モデルを提案した。以上がこれまでの成果であり、計画の3分の2を完了したことから順調に進展しているといえる。2年計画の最終年にあたる令和2年度は、これまでの研究で得られたHSAの変性モデルについて検証を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はこれまでの結果について以下の点から検証を行う。 一つ目は、界面において構造変化によらない重水素取り込み速度の変化についてである。界面では、構造変化がなくても溶液中よりも重水素取り込み速度が低下する可能性がある。そこで、立体構造をもたないペプチドについて、溶液状態と泡状態でHDX-MSを行い、泡化(界面)による重水素取り込み速度の変化を検証する。 二つ目は、界面で酸化などの化学的修飾の有無についてである。界面で酸化などが促進される場合、それらの化学修飾によって立体構造が変化する可能性もあるため、ペプチドマッピングを行い、化学修飾の有無について確認を行う。 三つ目は、HSA以外のタンパク質への応用である。HSA意外にOvalvminや抗体など他のタンパク質についてもタンパク質泡気液界面評価系で評価を行い。確立した手法がタンパク質に一般的に適用可能であることを示すとともに、界面での構造変化についてタンパク質に共通する特徴がないか考察を行う予定である。
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