2019 Fiscal Year Research-status Report
発癌促進因子YAPに着目した核内受容体CAR依存的な肝発がんの機序及び種差の解明
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19K16352
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
志津 怜太 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (50803912)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 化学発がん / 肝細胞増殖 / 肝発がん / 種差 / CAR / YAP |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、化学物質による核内受容体CARの活性化依存的な肝発がんの機序並びにそのヒト-齧歯動物間の種差の解明を目指し、発がん関連タンパク質であるYAPとCARとの相互作用に注目し解析をおこなった。 マウス及びヒトCAR (mCAR、hCAR)、マウス及びヒトYAP(mYAP、hYAP)の組換えタンパク質を調製し、Ni-NTAアガロースを用いたプルダウンアッセイによりCAR とYAP の相互作用を調べたところ、mCARとmYAPは相互作用するが、hCARとhYAPはしないことを見出し、CARとYAPの相互作用がヒト-齧歯動物間の肝発がんの種差の重要な決定因子である可能性を示した。さらに、各ドメインを欠損させたYAPタンパク質を用いた解析により、mCARはYAPのWWドメインと呼ばれる領域と結合することを見出した。WWドメインは、PYモチーフと呼ばれるPPXYのアミノ酸配列と特異的に結合することが知られている。そこで、mCAR及びhCARがPYモチーフを有するか否かについて調べたところ、mCARはそのタンパク質構造の表面にPYモチーフ(PPAY)を有するが、hCARではこれがPPAHに変異していた。そこで、mCARのPYモチーフをhCAR型に変異させたところ、CARの標的遺伝子転写活性化作用は変化しないにも関わらず、YAPとの相互作用は減弱することが明らかとなった。逆にhCARのPPAH配列をmCAR型のPYモチーフに変異させたところ相互作用は増強したことから、このPYモチーフのヒトと齧歯動物との1アミノ酸の違いが、CARとYAPの相互作用の種差、ひいてはヒトと齧歯動物におけるCARを介した肝発がんの種差の原因となることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた実験内容の遂行、次年度の研究に向けた研究材料の作製等について、計画通りに進んでいる。 文部科学省新学術領域研究 学術研究支援基盤形成 先端モデル動物支援プラットフォームのご支援のもとmCARのPYモチーフをhCAR型に変異させた遺伝子改変マウス(CAR-PYヒト化マウス)の作製を開始し、現在F1世代ヘテロマウスを得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
CAR-PYヒト化マウスの作製を完了し、肝におけるCARとYAPの相互作用を、両タンパク質の抗体を用いた共免疫沈降法により調べる。これにより、CARとYAPの相互作用における PYモチーフの役割をインビボで明らかにする。野生型及びCAR-PYヒト化マウスを用いて、肝発がんイニシエーターのジエチルニトロソアミン、及びCAR 活性化物質で肝発がんプロモーターのフェノバルビタールを用いた肝発がん実験を行う。投与開始20 週後に一部マウスから肝を摘出し、肝細胞増殖や前癌病変の発現を免疫組織染色等により確認する。また、細胞増殖関連遺伝子やYAP 標的遺伝子等の発現変動については、RNA-seq等を用いて網羅的に解析する。35 週後にマウスを屠殺して肝を採取し、免疫組織染色、定量的逆転写PCR により肝がんマーカーによる肝がんの発生頻度を解析する。 申請者らは、マウス肝細胞由来AML-12細胞とアデノウイルスベクターを用いて、CAR活性化依存的肝細胞増殖のインビトロ評価系の作製に成功しており、また初年度に、mCARの野生型及びPYモチーフをhCAR型に変異させた変異体、hCARの野生型及びPPAH配列をmCARのPYモチーフに変異させた変異体の発現アデノウイルスベクターを作製した。よって、本評価系とCARの各種変異体発現アデノウイルスベクターを用いて、増殖細胞数の測定(WST-8アッセイ)や肝細胞増殖関連遺伝子mRNA発現レベルの解析(定量的逆転写PCR)等により、CAR各種変異体の肝細胞増殖への影響を調べる。 以上により、齧歯動物におけるCAR依存的な肝がんの機序及び種差を解明する。
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Research Products
(6 results)