2019 Fiscal Year Research-status Report
TMEPAIファミリーによるYAP抑制機構の解明: 悪性中皮腫根治を目指して
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19K16360
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
中野 なおこ 昭和薬科大学, 薬学部, 助教 (50733218)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TMEPAI / C18ORF1 / YAP / 悪性中皮腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、がん遺伝子として知られている転写コアクチベーターであるYAPの活性を抑制する分子機構の解明を目的としている。特に、日本で近年増加傾向である悪性中皮腫に着目しており、悪性中皮腫ではYAPの高発現が報告されている。申請者は、これまでにTGF-βシグナル抑制分子であるTMEPAIファミリー (特にC18ORF1) によってYAPの活性を抑制する結果を得ている。そこで、C18ORF1によるYAP活性抑制メカニズムを明らかにすることを目的として検討を行った。まず、YAPの活性を抑制するHippoシグナル構成分子であるLATSまたはMST1とC18ORF1の協調作用を検討したが、協調作用は認められなかった。 また、C18ORF1によって悪性中皮腫細胞の増殖能や腫瘍形成能を抑制できるか否かを検討するために、ルシフェラーゼ遺伝子を導入した悪性中皮腫細胞を樹立し、この細胞を用いてC18ORF1を高発現させた悪性中皮腫細胞を樹立した。樹立した細胞を用いて、まず、YAPのリン酸化状態を検討した。その結果、コントロール細胞に比較して、C18ORF1高発現悪性中皮腫細胞におけるYAPのリン酸化が促進している傾向が認められた。次に、この細胞を用いて細胞増殖能へのC18ORF1の影響を検討したところ、コントロール細胞に比較してC18ORF1高発現細胞の方が細胞増殖能が抑制された。さらに、これらの細胞をヌードマウスの胸腔内に移植し、腫瘍形成能へのC18ORF1による影響をin vivoイメージングを用いて検討したが、現在のところ、コントロール細胞との違いは分からなかった。この実験によって、コントロール細胞を移植したマウスに比較して、C18ORF1高発現悪性中皮腫細胞を移植したマウスの方が、腫瘍形成能が抑制されている、また、生存期間が長いなどの結果が得られれば、C18ORF1によって悪性中皮腫細胞の腫瘍形成能が抑制できる可能性を証明できると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
C18ORF1によるYAP活性抑制メカニズムを検討するために、YAPの活性を抑制するHippoシグナル構成分子であるLATSまたはMST1とC18ORF1の協調作用を検討したが、協調作用は認められなかった。そこで、C18ORF1と協調してYAPの活性を抑制する分子を探索するために、C18ORF1やYAPに結合する新規タンパク質をスクリーニングすることとなった。スクリーニングを依頼するためにC18ORF1タンパク質を精製する必要があったが、精製に時間がかかった。また、C18ORF1野生型および変異体高発現悪性中皮腫細胞を樹立したが、各細胞間でC18ORF1野生型および変異体タンパク質の発現量が揃わないなどで何度も作り直す必要があったこと、ヌードマウスの胸腔内に移植し、腫瘍形成能へのC18ORF1による影響をin vivoイメージングを用いて検討したが、胸腔内への移植技術が安定していないこともあったため、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
C18ORF1およびYAPに結合する可能性のある候補分子が得られていることから、これら分子が実際にC18ORF1によるYAPの活性抑制・タンパク質分解に関与するか否かを免疫沈降法などを用いて検討していく。
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Causes of Carryover |
私事で、急遽、予定していた日本癌学会と日本生化学会への参加を取りやめることになりました。その結果、都内のシンポジウムに参加しただけでしたので、旅費として見積もっていた分が余りました。スクリーニングの結果、C18ORF1およびYAPに結合する可能性のある候補分子が得られていることから、これら分子とC18ORF1およびYAPとの関係を調べるにあたり、クローニングのための酵素類や候補タンパク質に対する抗体の購入費などに充てる予定です。
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