2019 Fiscal Year Research-status Report
疾患特異的なミトコンドリア動態を制御する新たな治療戦略の開発
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19K16363
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Research Institution | Center for Novel Science Initatives, National Institutes of Natural Sciences |
Principal Investigator |
田中 智弘 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター、アストロバイオロジーセンター、生命創成探究, 新分野創成センター, 特任助教 (00812760)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / 筋萎縮性側索硬化症 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋萎縮性側索硬化症(ALS)において、ミトコンドリアの過剰な分裂は家族性・孤発性ALSの症例に共通して認められる病態であるため、より多くの患者への治療を可能にする普遍的な標的として注目されている。これまでに申請者らは、ミトコンドリアの過剰な分裂を引き起こす心臓の病態(心不全)において、ミトコンドリア分裂を司るDrp1と相互作用するタンパク質Filamin Aを見出したことから、病態特異的なDrp1複合体の形成がミトコンドリアの動態異常に広く共通するメカニズムとなる可能性を示してきた。本研究課題においては、1)ALSの病態依存的なDrp1相互作用タンパク質の(網羅的な)同定、および2)その相互作用を抑制する薬剤の同定・開発を目指す。 2019年度は、ALSモデルであるSOD1 G93A tgマウスを用い、脊髄前角の運動ニューロンにおいてDrp1- Filamin A相互作用が強まっていることをproximity ligation assayによって可視化・定量化することができた。さらに、このタンパク質間相互作用を抑制する化合物シルニジピンを発症後(生後100日~)に連続投与したところ、生存率を有意に上昇させることを見出した。さらに、運動ニューロン様の培養細胞株にALS原因遺伝子SOD1 G93A変異を発現誘導しミトコンドリアの輸送の異常を起こした上でシルニジピンを処置すると、ミトコンドリア輸送が顕著に回復することを見出した。2020年度は、この分子メカニズムを究明するとともに、病態特異的なDrp1複合体の新たな構成因子を同定する計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ALSモデルマウスにおいて病態依存的にDrp1と相互作用するタンパク質を確認でき、その病態を抑制する化合物を見出したことから、進捗状況は順調と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度も予定通り実験計画を遂行する。
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Causes of Carryover |
2019年度には、病態依存的なDrp1複合体の構成因子を網羅的に探索する予定であったが、心不全モデルから予想された候補分子(Filamin A)との相互作用がALSモデルマウスにおいても示唆される知見を得た。そのため、計画を一部変更し、Filamin Aに絞った解析を行ったため、次年度使用額が生じた。 したがってALSにおける病態依存的なDrp1複合体構成因子の網羅的探索は次年度に行なうこととし、未使用額はその経費に充てることにしたい。
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