2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K16364
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Research Institution | National Research Institute of Police Science |
Principal Investigator |
山口 晃巨 科学警察研究所, 法科学第三部, 研究員 (50822087)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経剤 / LC-MS / 誘導体化 / 縮合剤 / 活性エステル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的のひとつである「新規誘導体化LC-MS/MS法の開発による神経剤加水分解生成物分析の高感度化」のために、第一に研究実施計画に記した、疎水性及びイオン化効率の向上が期待される官能基をもつ、ベンジル誘導体化試薬3種類の合成を行った。各誘導体化試薬について神経剤加水分解生成物(ホスホン酸モノエステルもしくはホスホン酸)の標準溶液を用いて、その反応条件を検討した。その結果、反応性の点から、これらの誘導体化試薬を用いたさらなる条件検討を行ったとしても、本研究の目標である1 ng/mLの溶液からの神経剤加水分解生成物の検出は困難であろうことが判明した。そこで、研究実施計画において記した代替案である「脱水縮合型の反応による誘導体化」の有効性を検討することとした。脱水縮合型の反応剤および求核剤を検討した結果、当初想定していた脱水縮合生成物よりも、その中間体である活性エステルの方がよい検出結果を与えることを見出した。この活性エステルが誘導体化収率よく生成し、LC-MS/MS分析において十分に保持・イオン化されることが判明したため、現在はこの反応および分析条件について検討を行っている。 現在の方向で研究を進めることにより、化学テロへの対応体制確立のための本研究の目的である「1 ng/mLの溶液からの神経剤加水分解生成物の検出」の実現可能性があると考えている。また、この活性エステルが安定して分析可能であることがそもそも予想に反しており、おそらくそれゆえにこれまで検討されてこなかった反応であるため、神経剤加水分解生成物に限らない適用の可能性も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では有望な誘導体化試薬の合成までを予定していたが、現在はその追究から切り替え代替案を進めている。しかし代替となる誘導体化反応および当初2年目に予定していた分析性能を達成する方法を見出しつつあることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
第一に、2019年度に発見した脱水縮合剤を用いる神経剤加水分解生成物の誘導体化LC-MS/MS法の反応条件および分析条件の最適化を、標準溶液を用いて行う。また、血漿および尿に神経剤加水分解物を添加し、種々の抽出操作等の前処理条件を検討する。これらにより、本分析法の適用範囲を判断する。 第二に、確立した分析法と、高い質量分解能を持つLC-Q-Orbitrapによる疑似Neutral Loss Scanningを組み合わせる、未知構造の神経剤(これらは現在世界的な脅威となっている)にも適用可能な神経剤特異的スクリーニング法を開発する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、研究の実施により、当初の研究計画による所望の分析性能の達成が困難であると判断し、かつ、その代替となりうる反応を発見したことから、当初の計画において誘導体化試薬の合成に使用予定であった「マグネチックスターラー付き低温恒温槽」(要求額750千円)の購入を見合わせたためである。次年度使用額および翌年度分として請求した助成金は、LC条件の最適化に伴いLCカラム(1本60千円~)を数本購入すること、LC-MS/MSのメンテナンス費用(~100千円)および分析結果の処理(疑似Neutral Loss Scanning)に用いるコンピュータ(100~150千円)に充てる。
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