2021 Fiscal Year Annual Research Report
エキソソーム脂質に着目した薬剤性肝障害に対する新規バイオマーカーの網羅的探索研究
Project/Area Number |
19K16365
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Research Institution | National Institute of Health Sciences |
Principal Investigator |
孫 雨晨 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 研究員 (60818904)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 薬物性肝障害 / エキソソーム / リピドミクス / バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまずこれまでに確立した市販キットを用いた生体試料中のエキソソームの抽出法、C18固相カラムを利用したエキソソーム脂質の抽出法、並びに高分解能型質量分析計を用いた抽出エキソソーム試料に対するリピドミクス法を含めたエキソソーム中脂質の網羅的解析に関する手法論を論文にまとめ、Methods in Molecular Biology誌に投稿し、採択をされた。 一方、上記に加えて前年度までの解析で、四塩化炭素投与した肝障害モデルラットにおける肝障害マーカー候補エキソソーム脂質分子群の検証を目的として、薬物性肝障害患者の急性期並びにその回復期由来血清検体からエキソソームを抽出し、エキソソーム脂質に対するリピドミクス解析を実施した。その結果、薬物性肝障害患者の急性期と回復期の間で、統計的に有意なエキソソーム脂質量の変化が認められた脂質分子として14分子が同定された。このうち、肝障害モデルラットで肝障害マーカーとして同定された分子は1種類のみであった。次に、リピドミクス解析で同定された脂質分子の肝障害診断能を明らかとするために、ROC曲線解析を実施した。その結果、薬物性肝障害の急性期と回復期の鑑別における同定された脂質分子のROC曲線下面積で0.8を超える有望な分子は認められなかった。以上の結果から、本研究で利用した四塩化炭素による肝障害モデル動物を用いて同定された肝障害マーカーを薬物性肝障害患者の鑑別に利用するのは現状困難であることが明らかとなった。今後、これまでに動物モデルで同定された肝障害マーカー候補エキソソーム脂質分子の薬物性肝障害のバイオマーカーとしての可能性を追求するために、肝細胞特異的なエキソソームの抽出法の開発、あるいは患者背景を用いたさらなる患者層別化等の追加解析を行う必要があると考えられた。
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