2019 Fiscal Year Research-status Report
脳内微小環境破綻を担うミクログリア活性化制御機構とその細胞生物学的意義の解明
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19K16372
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
谷口 将之 神戸大学, 医学研究科, 特命助教 (90831751)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | エピゲノム / ミクログリア / 内側前頭前皮質 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会挫折や孤独から受けるストレスは、抑うつや不安亢進など情動変容を惹き起し、精神疾患のリスク因子となる。研究代表者らは社会挫折ストレスを用い、ストレスの反復は情動変容に伴う内側前頭前皮質の神経細胞樹状突起の萎縮を誘導すること、この変化にはミクログリアの活性化が関わることを見出した。この知見は、ミクログリアの活性化が脳内微小環境の破綻を担う可能性を推測させるが、その実態は不明である。本研究では、ミクログリアの活性化を担う転写・エピゲノム制御機構を明らかにし、ストレス性疾患の病態機序解明や新たな創薬標的の提言を目指す。 本年度は、単回・反復ストレスに供したマウスの内側前頭前皮質と側坐核のミクログリアのChIP-seq(Chromatin immuno-precipitation sequencing)を行い、ストレスの反復は、内側前頭前皮質特異的に増強・減弱するエピゲノム変化と、脳領域非特異的に増強するエピゲノム変化を誘導することを見出した。ATAC-seq(Assay for Transposase-Accessible Chromatin using sequencing)を導入し、内側前頭前皮質と側坐核のミクログリアのオープンクロマチン領域の解析を立ち上げた。現在までに、反復ストレス供したマウスの内側前頭前皮質と側坐核のミクログリアを解析し、反復ストレスによるオープンクロマチン領域の変化を見出しつつある。さらに、ChIP-seqとATAC-seqを統合して解析し、ストレスの反復により誘導されるエピゲノム変化を制御する転写因子を見出しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の当該年度の研究計画では、ストレスによる内側前頭前皮質ミクログリアのエピゲノム変化を同定する目的としていた。「研究実績の概要」の通り、単回・反復ストレスにより誘導される内側前頭前皮質と側坐核のミクログリアのエピゲノム変化をChIP-seqにより網羅的に調べ、ストレスの反復により誘導されるエピゲノム変化を同定した。また、当初の研究計画では、ストレスよる内側前頭前皮質ミクログリア活性化を制御する転写・エピゲノム制御因子についても解析する予定であった。ATAC-seqを通じて、ストレスの反復により誘導されるエピゲノム変化を制御する転写因子を見出しつつあり、当該転写因子の遺伝子操作実験にも着手している。以上のことから、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、反復ストレスに供したマウスの内側前頭前皮質ミクログリアのRNA-seq解析を行い、ストレスの反復により誘導される遺伝子発現変化を探索する。RNA-seq解析はすでに進行中で、エピゲノム変化に伴って変動する遺伝子を見出しつつある。これら遺伝子発現を操作し、情動変化やミクログリアの活性化、神経細胞の形態変化への影響を調べる。また、今年度までに見出した反復ストレスにより誘導されるエピゲノム変化を制御する転写・エピゲノム制御因子の役割を、条件付け欠損マウスを作出して解析する。当該転写因子・エピゲノム制御因子の条件付け欠損マウスを作成できれば、反復ストレスに供し、情動変化への影響を調べる。並行して、組織学的解析を進め、転写・エピゲノム制御因子がミクログリア活性化など脳内変化に与える影響を調べる。RNA-seqを行い、当該転写・エピゲノム制御因子が関与する遺伝子発現についても調べる。
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Causes of Carryover |
研究の実施に伴い、計画の細部に関して見直しを図ることによって本年度の使用額を抑えることが出来た。また、次年度に必要な消耗品量などは実施するまで未知の部分があるため、次年度使用額として計上した。使用計画に関しては、当初の研究計画に準じて遂行する。
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Research Products
(4 results)