2020 Fiscal Year Research-status Report
KCNQ(Kv7)K+チャネル開口薬による慢性疼痛緩解の脊髄後角シナプス機構
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19K16377
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
尾山 実砂 北里大学, 薬学部, 助教 (20804503)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 疼痛 / KCNQチャネル / 抑制性 / 脊髄 / 電気生理 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度に実施したKCNQチャネル開口薬retigabineの脊髄髄腔内投与により鎮痛作用が得られたことより、2020年度は脊髄レベルでのシナプスメカニズムの解明を目的に電気生理学的解析を展開した。坐骨神経部分結紮により神経障害性疼痛を発症するSeltzerモデルマウスより作製した後根付き脊髄スライス標本において、潅流適用したretigabine (50 microM)が、A線維刺激誘発性興奮性シナプス後電流 (A-fiber-mediated EPSCs) に対してその振幅を78.1%±5.6 (mean±sem, n=6)抑制した。現在、KCNQチャネル閉口薬XE-991 (10 microM)の存在下にA-fiber-mediated EPSCsの抑制作用が拮抗される結果が得られつつある。一方、C線維刺激誘発性興奮性シナプス後電流 (C-fiber-mediated EPSCs)の振幅には影響を与えないという結果も得られており、現在データ数を増やすよう努めている。 2019年度に電気生理実験を開始した際には、自発性興奮性シナプス後電流 (sEPSCs) に対して抑制作用を示す結果が示唆されていた。しかし、安定した頻度でsEPSCsの記録を得ることが困難であったことからさらなる薬効評価は実施せず、テトロドトキシン存在下に記録した活動電位によらない微小シナプス興奮性後電流(mEPSCs)を記録することでスループット良くデータを収集するよう努めた結果、mEPSCsに対してretigabineが影響を示さない結果を得た。以上より、KCNQ (Kv7) K+チャネル開口により一次求心性A線維神経終末への活動電位伝播を抑制して興奮性神経伝達を抑制することがretigabineの鎮痛作用に寄与していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度は、脊髄におけるKCNQチャネル開口が興奮性電流へ与える影響を電気生理学的実験の遂行により検討した。坐骨神経部分結紮により神経障害性疼痛を発症するSeltzerモデルマウスより作製した後根付き脊髄スライスを用いて、A-fiber-あるいはC-fiber-mediated EPSCsを記録することは難度が高く、決してスループットの良い実験とは言い難い。しかし、「研究実績の概要」の項でも述べたように、retigabineがA-fiber-mediated EPSCsを抑制するという結果が再現よく得られ、またC-fiber-mediated EPSCsに対しては作用を示さないことが示唆され、入力する線維に対する明確な作用差を示すことができたことから、retigabineの鎮痛作用メカニズムの解明に大きく貢献できたと確信する。また、sEPSCsの安定した記録を得ることには苦戦したが、mEPSCsを記録して薬効評価する方法へと切り替えたことで、トラブルシューティングできたと判断する。よっておおむね順調であると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
「研究実績の概要」の項でも記したように、2020年度はKCNQ (Kv7) K+チャネル開口により一次求心性A線維神経終末への活動電位伝播を抑制して興奮性神経伝達を抑制することがretigabineの鎮痛作用に寄与していると考えられた。2021年度は、retigabineのC-fiber-mediated EPSCsに対する作用と、KCNQチャネル閉口薬XE-991存在下にA-fiber-mediated EPSCsを記録することでretigabineの振幅抑制が拮抗されるかどうか検討する実験についてデータ数を増やすことに従事したい。また、この一次求心性A線維神経終末のKCNQ (Kv7) K+チャネル開口による興奮性伝達抑制が、疼痛モデル依存的な作用かどうか検討するために、naiveのマウスから作製する脊髄スライスを用いて同様にA-fiber-mediated EPSCsを記録することで、比較する予定である。さらに、単一の細胞から記録した興奮性伝達に対するretigabineの作用についてだけでなく、膜電位感受性色素を用いた実験によりスライス全体の膜電位変化に与える影響についても評価する。
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Causes of Carryover |
当初予定では、電気刺激装置を購入する予定であった。しかし、電気生理実験の記録及び解析用のPCが相次いで故障したことから、PCの購入費へ充てた。また、電気生理実験のデータ収集スピードを向上させるため、同研究室での他科研費との共同購入により電気生理用アンプを購入した。
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Research Products
(1 results)