2019 Fiscal Year Research-status Report
急性前骨髄球性白血病(APL)に対するセレブロンモジュレーターの作用機構の解明
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19K16378
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Research Institution | Tokyo Medical University |
Principal Investigator |
清水 誠之 東京医科大学, 医学部, 助教 (30817143)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | セレブロン(CRBN) / セレブロンモジュレーター / タンパク質分解誘導 / ポマリドミド / 融合遺伝子 / 急性前骨髄急性白血病(APL) |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、候補の基質(X)がポマリドミド存在下におけるセレブロン(CRBN)の基質であることを生化学的・分子生物学的手法により明らかにした。まず、ポマリドミド処理による基質(X)の分解がCRBNに依存しているかを調べるためにCRISPR/Cas9ゲノム編集技術を用いて様々なCRBNノックアウト(KO)細胞株を樹立した。これらCRBN-KO細胞株では、ポマリドミド存在下においても基質 (X)のタンパク質の分解は生じなかった。よって、基質(X)の分解はCRBN依存的であることが明らかになった。 次に、ユビキチンアッセイによりポマリドミドに依存して基質(X)のユビキチン化が促進され、この基質(X)のユビキチン化はユビキチン化阻害剤MLN4924により抑制された。よって、ポマリドミドーCRBNによる基質(X)の分解はユビキチンプロテアソーム系に依存していることが分かった。 続いて、ポマリドミド存在下においてCRBNが基質(X)のどのアミノ酸領域と結合するかを調べた。今回発見された基質 (X)には、これまでに報告されたCRBNの基質群と共通したグリシンを含む特定のアミノ酸配列が複数ヶ所保存されていた。そこで基質(X)の特定のグリシンをアラニンに置換した変異体を作成したところ、2ヶ所のグリシン部位がポマリドミド-CRBNとの結合と分解に関与していることが明らかになった。急性前骨髄急性白血病(APL)発症に関わる基質(X)から生じる融合基質(X-APL1)にも特定のグリシン配列が保存されたままであり、基質(X)と同様の部位のグリシン変異体の融合基質(X-APL1)を作成したところ、ポマリドミド-CRBNと変異体融合基質の結合能は低下し、それに続く分解も生じなかった。 以上の解析により、基質(X)および融合基質(X-APL1)はポマリドミドに依存したCRBNの基質であることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、ポマリドミド依存的CRBNの候補となる基質(X)および融合基質(X-APL1)を生化学的に解析し、それぞれが基質であることを証明できた。特筆すべきは、臨床治験を突破しているサリドマイド・レナリドマイド・ポマリドミドの中で、ポマリドミドが基質(X)および融合基質(X-APL1)と強く結合し、高い分解効率を示したことである。既にレナリドミドの基質特異性としてCK1αが報告されているが、本研究の基質(X)と融合基質(X-APL1)はポマリドミドに対し、特異性があると考えられる。以上の進捗状況から「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、CRBN-ポマリドマイドによる融合基質(X-APL1)分解を介したAPL治療法の分子基盤に焦点を定め、融合基質(X-APL1)を発現するAPLモデル細胞株を使って解析を進める。すでに、融合基質をコードする遺伝子をコンディショナルに発現できるAPLモデル細胞株は入手した。このAPLモデル細胞株において、臨床学的に使用される低濃度のポマリドミド処理により融合基質の分解、トランスクリプトーム解析による下流遺伝子の発現変動、細胞増殖の抑制効果について検討する。また、CRBN-ポマリドマイドで「分解されない」融合基質-グリシン変異体をもつAPLモデル細胞株を作成する。このグリシン変異体と野生型の融合基質をそれぞれ発現するにAPLモデル細胞株において、ポマリドミドを処理し、それぞれの融合基質のタンパク質分解、下流遺伝子の発現、細胞増殖能を比較解析を行う予定である。
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