2019 Fiscal Year Research-status Report
過分極作動性HCN1チャネルを介したてんかん発症の調節メカニズム解析
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19K16384
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Research Institution | Osaka University of Pharmaceutical Sciences |
Principal Investigator |
清水 佐紀 大阪薬科大学, 薬学部, 助教 (00630815)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | HCN1チャネル / てんかん / 行動薬理学 / pentylenetetrazole / 脳内アミノ酸 / てんかん原性 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜の過分極により活性化されるHCN1チャネルは、神経発火のオシレーション調節やペースメーカーの役割を担っている。本研究では脳内HCN1チャネルに着目したてんかん発症の調節機構について解析を進めている。本年度は、新たに作出されたHCN1チャネル欠損(Hcn1-KO)ラットを用いて、以下の行動薬理学的評価を行った。 ①けいれん発現の感受性評価:雄性Hcn1-KOラットおよび起源動物である雄性F344ラット(対照)を用いて、けいれん誘発剤であるpentylenetetrazole(PTZ)によるけいれん発現の感受性を評価した。また、ddY系雄性マウス(正常動物)を用いて、HCNチャネル遮断薬のZD7288を脳室内投与した後、PTZ誘発けいれんの感受性評価を実施した。PTZ単独投与の結果、Hcn1-KOラットはF344ラットと同程度のPTZ誘発けいれん(けいれん強度や潜伏時間等)を発現した。一方、ddY系マウスにおいても、ZD7288脳室内投与群は溶媒投与群と比較して、PTZ誘発けいれん発現に対してほぼ差は認められなかった。 ②てんかん原性形成過程の評価:Hcn1-KOラットおよびF344ラットに対して、単回投与ではけいれんを誘発しない低用量PTZの連続投与(12日間)を行い、PTZ誘発キンドリングによるてんかん原性の獲得過程へ及ぼすHCN1チャネルの影響を評価した。その結果、Hcn1-KOラットはF344ラットと比較して、PTZ誘発キンドリングの形成過程にほぼ差は認められなかった。 ③脳内アミノ酸含量の定量解析:Hcn1-KOラットおよびF344ラットの全脳9部位における脳内アミノ酸含量をHPLC法により定量解析を行う。本年度は、定常状態における各動物の全脳を摘出し、部位分けした後、HPLC測定用のサンプル処理を施した。現在、各脳部位におけるアミノ酸含量(抑制性神経伝達物質:GABA、興奮性神経伝達物質:グルタミン酸およびアスパラギン酸)の定量解析を順次進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・Hcn1-KOラットおよびHCNチャネル遮断薬投与時における、PTZ誘発けいれん感受性評価およびてんかん原性獲得過程の評価を実施することできた。結果としては、HCNチャネルの不活性化状態により、PTZ誘発けいれん発現はほぼ影響を受けないことが明らかとなった。今後は他のてんかんモデル等を用いた評価を検討することとした。 ・Hcn1-KOラットおよびF344ラットの脳内各部位におけるアミノ酸含量の定量解析は、計画通り順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
・次年度内に、Hcn1-KOラットおよびF344ラットの脳内アミノ酸含量の定量解析を終える。 ・PTZ以外のけいれん誘発剤やてんかんモデルを用いて、Hcn1-KOラットあるいはHCNチャネル遮断薬(ZD7288, Ivabradine)投与時のてんかん発症における感受性評価を行い、HCN1チャネルを介したてんかん発症の調節機構をさらに解析する。
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