2020 Fiscal Year Research-status Report
PBP type-TEのペプチド環化触媒能の解明と環状ペプチドの多様性拡張
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19K16390
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
松田 研一 北海道大学, 薬学研究院, 助教 (50812301)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環状ペプチド / ペプチド環化酵素 / 生体触媒 / 非リボソームペプチド合成酵素 / 放線菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
保護基を用いることなく官能基選択的、位置選択的なペプチド環化反応を効率よく触媒する環化酵素を生体触媒として応用することで、環境調和性の高い環状ペプチド合成法の実現が期待できる。 我々はこれまで、放線菌の非リボソーム型環状ペプチドsurugamide類の生合成における新しいタイプのペプチド環化酵素SurEを見出し、その寛容な基質選択性を明らかにしてきた。一般的なNRPS経路の環化酵素は数MDaにおよぶ巨大酵素のC末端に融合して存在するのに対し、SurEは50 kDa程度でありNRPSから独立して存在する「単独酵素」である。SurEは一般的なNRPS環化酵素と相同性を示さない一方、ペニシリン結合タンパク質(PBP)に相同性を示すことから、我々はこれを新規ペプチド環化酵素ファミリー「PBP-type TE」として位置づけてきた。データベース検索の結果、様々な基質選択性を有するPBP-Type TEの一群が放線菌ゲノム中に見出された。そこで本研究では、これによって生合成される多様な天然環状ペプチドを同定し、各環化酵素の基質選択性の詳細な解析を行うことで、放線菌に広く分布したPBP-type TEファミリーの多様性の全容解明を目指す。本研究で得られる成果は、汎用性の高いペプチド環化触媒のライブラリー化、さらには基質選択性を拡張する触媒エンジニアリングへと展開することが期待される。また本研究では、PBP-type TEを利用したNRPSエンジニアリング手法の検討も行う。 今年度は、SurEの基質選択性を多数の合成基質を用いて評価した。また、ホモログ酵素PenAについても基質選択性を詳細に解析し、SurEとの差異を見出した。加えてタンパク質モデル構造の比較により、異なる選択性の構造基盤を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
放線菌由来環状ペンタペプチドpentaminomycin類およびBE-18257類の生合成におけるペプチド環状化反応を担うPenAの組換えタンパク質を可溶性画分に取得し、in vitroにてその基質選択性を詳細に検討した。 その結果、PenAはSurEと同様に、①N-, C-末端残基に対する厳密な立体選択性(N-末端はL-アミノ酸、C末端はD-アミノ酸)および②基質配列内部のアミノ酸に対する寛容な選択性、を示すことが明らかとなった。一方、これらの酵素は基質の鎖長に対しては異なる選択性を示した。テトラペプチドを基質とした反応において、SurEは単量環化体及び二量環化体を与えたのに対し、PenAは二量環化体を与えず、単量環化体を選択的に与えた。このことからPenAはSurEと比較して、より短鎖のペプチド基質の環化に特化した環化酵素であることが明らかとなった。またPenAのモデル構造をSurEのアポ体の構造と比較したところ、C末端のリポカリンドメインのループが10残基ほど伸長しており、基質ポケットの入り口に覆いかぶさるように位置することが示唆された。このことから本ループ構造がPenAに短鎖ペプチド選択性を付与する重要な構造モチーフであることが示唆された。現在、本モチーフ構造が基質選択性に与える影響について検証するため、種々の改変酵素を調製しその機能解析を実施している。 また別種の放線菌に由来するホモログ酵素をクローニングし、組換え酵素のin vitro機能解析を実施した。その結果、本酵素は本来と同等のサイズの基質に対して分子間反応を触媒可能であることが判明した。現在は本酵素の基質選択性について検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
検証中のホモログ酵素に関しては、合成基質を用いて選択性を検証すると共に、改変酵素を作製し、タンパク構造の違いが選択性に与える影響について明らかにする。特に、比較的サイズの大きな基質に対してライゲーション反応を触媒できる「ホモログ酵素」に関しては、その生体触媒利用を指向し、高効率なライゲーション手法の確立を検討する。 また、検証対象とするホモログ酵素をデータベースより選定し、合成遺伝子を用いて組換え酵素を調製する。比較対象を拡充することにより、PBP-type TEファミリーにおける基質選択性を規定する構造基盤の包括的な理解を目指す。
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Research Products
(10 results)