2021 Fiscal Year Research-status Report
日本伝統の芳香性生薬の「香り」による睡眠障害改善に関する研究
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19K16400
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
竹元 裕明 東邦大学, 薬学部, 講師 (40511431)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 睡眠障害 / 抗不安作用 / 芳香療法 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠障害は入眠困難、中途覚醒、熟眠障害など不眠症を主とする疾患であり、抑うつ・不安など他の精神疾患の合併率も高く、患者のQOLを著しく低下させる。本研究では薬物療法の副作用の観点から、簡便な利用形態を特徴とする芳香療法の睡眠障害の改善効果に関して睡眠障害モデルマウスを用いて解析することを目的とした。 本モデルは、マウスに対して水浸ストレスを負荷することで作成される。これまでに、ストレス負荷の24時間後からマウスの休息時間帯での活動量増加が認められたことを報告した。そこで、24時間の急性ストレス負荷による行動や脳内遺伝子の変動に対する、芳香療法の効果を解析することにした。ストレス緩和作用の報告例があるゴマ油の香りを試験対象とした。 ストレス負荷24時間後に高架式十字迷路試験を実施した結果、不安様行動が観察された。またうつ病のマーカーとされるDUSP1タンパク質の遺伝子発現量が、海馬および線条体においても有意に増加していた。ストレス負荷後にゴマ油を吸入投与した結果、不安様行動と遺伝子発現量が緩やかに減少した。そこで活性成分を同定するため、ゴマ油の芳香を担う主要成分として2,5-dimethylpyrazine および 2-methoxy phenolの単独効果を解析した結果、両化合物ともに、不安様行動とDUSP1発現量がコントロール群と同等レベルまで改善したことから、これらの分子が強力な抗ストレス剤となる可能性を見出すことが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回は、急性ストレス負荷後に誘発される不安様行動とストレスマーカー遺伝子の発現量低下作用を実施した。慢性的なストレス負荷による睡眠障害に対する改善効果を同時に検討しているが、個体差等の問題もあり、さらに例数を増やした上での解析には、まだ時間がかかると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
急性ストレス試験から、睡眠障害の改善に効果が期待される芳香成分を引き続き探索する。また慢性ストレス負荷マウスに対する効果検討として、安定した実験データを取得するために、新たなストレスマーカーを免疫組織学的解析により探索し、活性評価に繋げたい。
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Causes of Carryover |
当初計画していた実験内容に関して、中断せずに実施することが困難な状況が続いてしまった為に、未使用額が生じた。次年度は行動薬理学試験において実験匹数を増加させた上でデータ解析を行い、また免疫組織染色を中心とした生化学的な解析を行う費用として使用する予定である。
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