2022 Fiscal Year Research-status Report
日本伝統の芳香性生薬の「香り」による睡眠障害改善に関する研究
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19K16400
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
竹元 裕明 東邦大学, 薬学部, 講師 (40511431)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | アロマセラピー / 睡眠障害 / 抗不安作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠障害は抑うつ・不安症状を引き起こす要因となり、患者のQOLを著しく低下させる。抗うつ薬や抗不安薬の副作用の観点から、本研究では睡眠障害に伴う不安症状の軽減に対する芳香療法の有効性を検討した。 睡眠障害モデルマウスは水浸ストレスを24時間負荷することで作成し、高架式十字迷路試験における不安行動の増大を既に確認している。今回まず、睡眠障害モデルマウスに対してセサミオイルを30~90分間吸入投与し、投与時間の違いによる抗不安作用の発現と、ストレスに関連する脳内遺伝子の発現を解析した。その結果、高架式十字迷路試験におけるオープンアームへの進入率および滞在時間が吸入時間60分において最も増加し、うつ病のマーカーであるDUSP1タンパク質の遺伝子発現量が、吸入時間60分以降で低下する結果が得られた。 次にセサミオイルの抗不安作用に寄与する成分の同定を行った。セサミオイルの主要成分としてこれまでに、2,5-dimethylpyrazine、2-methoxy phenol、furfuryl mercaptanを同定している。単一成分の吸入投与において、2,5-dimethylpyrazineおよび2-methoxy phenol群で高架式十字迷路試験における抗不安作用が観察されたが、furfuryl mercaptan群ではその作用は弱かった。海馬および線条体におけるDUSP1の発現量は、2,5-dimethylpyrazineおよび2-methoxy phenol群で有意に減少していた。 以上の研究から、セサミオイルの最適濃度と有効成分を明らかにした。特に、2,5-dimethylpyrazineと2-methoxy phenolはDUSP1の発現を有意に抑制したことから、これらの分子を有効な抗ストレス剤として利用できる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、睡眠障害マウスに対するセサミオイルの抗不安作用を行動薬理学的試験と遺伝子解析を用いて評価した。さらにセサミオイルの活性本体として2種の揮発性成分の同定を行うことが出来た。昨年度は予備試験としてマウス脳の蛍光免疫染色およびウェスタンブロットにより、うつや不安症状に関連するタンパク質の発現解析の予備試験を実施しており、今年度はこれらの試験を通してセサミオイルの中枢神経系に対する作用をさらに解析する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
コルチコトロピン放出ホルモンは、脳の視床下部から分泌され、ストレス応答の開始を促進するペプチドホルモンである。視床下部-下垂体-副腎皮質系は、身体のストレス反応を調節する主要な機構であり、長期的なストレスによりこの軸のバランスが崩れると、うつ病や不安障害などの精神疾患を引き起こす可能性がある。今後は、蛍光免疫染色およびウェスタンブロッティングにより、マウス脳内のストレスホルモンの発現解析を実施する。
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Causes of Carryover |
当初計画していた実験内容に関して、中断せずに実施することが困難な状況が続いてしまった為に、未使用額が生じた。特に、本来予定していた研究を実施するための条件検討を連続して行うことが困難となり、実験の進行に対して大きな障害となってしまった。次年度は予定していた蛍光免疫染色やウェスタンブロットを中心とした生化学的な解析を行う費用として、未使用額を使用する予定である。
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