2019 Fiscal Year Research-status Report
分子標的薬の腎障害メカニズムの解明―大規模データから検出された新規リスクの検討―
Project/Area Number |
19K16417
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
真川 明将 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 研究員 (20827670)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 薬剤性腎障害 / Onco-nephrology / 分子標的薬 / シグナル伝達 / オフターゲット作用 / 薬物トランスポーター |
Outline of Annual Research Achievements |
平成31(令和元)年度は、米国の大規模副作用データベースFAERSの解析で絞り込んだ5種の分子標的薬の腎毒性について検討するため、ヒト腎由来の初代培養細胞(近位尿細管上皮細胞、糸球体内皮細胞、ポドサイト)を用いてin vitro毒性評価を行った。 In vitroの検討には、Cell Count kit-8を用いた。5種類のうち4種類の分子標的薬は濃度依存的に近位尿細管上皮細胞の増殖・生存率を低下させた。そのなかの3種類は臨床における最大血中濃度と同程度で有意な近位尿細管上皮細胞の増殖・生存率の低下を示し、1種類の分子標的薬は臨床における最大血中濃度の約150分の1の濃度で有意な近位尿細管上皮細胞の増殖・生存率の低下を示した。また、その分子標的薬は糸球体内皮細胞においては同様の濃度で増殖・生存率の低下を示さなかった。したがって、その分子標的薬は近位尿細管上皮細胞特異的に毒性を示す可能性がある。 さらに、上記の近位尿細管上皮細胞に毒性を示した分子標的薬のインタビューフォームを確認したところ非臨床試験の結果に記載されておらず、承認当初は問題になっていなかったことがわかった。一方で、文献検索データベースの検索では、市販後に症例報告が散見された。症例報告の病理所見には尿細管上皮細胞障害の記載がみられ、今回のin vitro毒性評価の結果と類似する。腎毒性発現のメカニズムについては報告がないため、さらなる検討が必要である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒト腎由来の初代培養細胞をもちいたin vitro毒性評価により、近位尿細管細胞特異的に細胞毒性を示す分子標的薬を1種類特定できた。したがって、進捗状況はおおむね順調に進展していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
In vitro毒性評価において近位尿細管細胞特異的に細胞毒性を示した分子標的薬について、毒性発現メカニズムの解析を進めていく。具体的には、薬物トランスポーターとオン・オフターゲット作用に着目し、詳細な検討をおこなう。
|