2020 Fiscal Year Annual Research Report
分子標的薬の腎障害メカニズムの解明―大規模データから検出された新規リスクの検討―
Project/Area Number |
19K16417
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
真川 明将 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 助教 (20827670)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 薬剤性腎障害 / 低分子化合物 / キナーゼ阻害剤 / 細胞毒性 / データベース / シグナル経路 |
Outline of Annual Research Achievements |
FAERSデータベースから検出された急性腎障害リスクと関連のある5種類のがん分子標的薬(PI3K阻害剤Copanlisib、BRAF阻害剤ベムラフェニブ、MEK阻害剤コビメチニブ、c-MET阻害剤クリゾチニブ、mTOR阻害剤エベロリムス)の腎毒性をヒト腎臓由来の培養細胞をもちいて検討した。中でもBRAF阻害剤のベムラフェニブとMEK阻害剤コビメチニブはヒト腎臓由来の培養細胞で顕著な細胞毒性を示すことが明らかとなった。 再度、FAERSデータベースにおいて別のBRAF阻害剤のダブラフェニブとMEK阻害剤トラメチニブを加えて、より詳細な解析をおこなったところ、ベムラフェニブとコビメチニブの腎障害のリスクは、ダブラフェニブとトラメチニブと比べて高い可能性が示された。また、このデータベースの結果は、培養細胞をもちいた毒性評価においても同様の結果が示された。臨床においては、ベムラフェニブ使用時は、ダブラフェニブと比べてより注意深い腎障害のモニタリングが必要であると考えられる。MEK阻害剤の併用がBRAF阻害剤に関連した腎障害にどのような影響をあたえるかはより詳細な検討が必要である。また、本研究においてはこれらの薬剤の腎毒性の発現メカニズムの特定には至らなかったものの、同じシグナル経路のBRAF/MEKを標的とする低分子化合物間で差異が生じていることから、BRAF/MEK/ERK経路以外の薬剤標的因子がベムラフェニブの腎毒性に関与している可能性が高いことが推察される。この点については、腎毒性メカニズムを特定する上での今後の検討課題である。
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