2020 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病患者の治療行動改善のための薬局薬剤師と栄養士の地域連携モデルの構築
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19K16426
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
富永 佳子 新潟薬科大学, 健康推進連携センター, 教授 (90837759)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 薬局薬剤師 / 管理栄養士 / 管理栄養士 / 食事療法 / 多職種連携 |
Outline of Annual Research Achievements |
2型糖尿病患者を対象とした定量調査の結果を学術雑誌に公表した。内容は次のとおり。2型糖尿病患者(40歳以上、薬物治療中)を対象として、食事療法の理解度ならびに栄養指導を受けた経験や教育入院経験などについて自記式質問紙調査(Web回答)を行ない、533名から回答を得た。理解度(20項目)は全般的に高い正答割合であったが、野菜の必要摂取量の知識不足、糖質制限の誤解なども示唆された。栄養指導を受けた経験があるのは約40%であり、通院先としては病院・専門医クリニックが約半数、残りが一般開業医という内訳であった。一般開業医で治療を受けている患者は病院・専門医クリニックで治療を受けている患者に比べて、栄養指導経験の割合は低かった。体重・血糖管理状況を目的変数とするロジスティック回帰分析では、栄養指導の経験の有無は有意な説明変数ではなく、年齢、教育入院、夜間勤務の有無、カロリーと糖質との違いについての理解の有無が体重・血糖管理の不良リスクに関係していることが明らかになった。 一方、薬局における食事指導のニーズや薬局薬剤師と管理栄養士との連携の現状について明らかにするために全国規模の調査を行ない、学会にて発表した。内容は次のとおり(1184名回答)。生活習慣病患者に定期的に対応する機会がある薬剤師(886名)においては、9割が食習慣について確認しており、多くがこうした助言の必要性を感じていた。助言を行う際には「患者が出来そうなことを優先」「生活背景をよく把握」などを意識しており「小さな成功を重ねて自信を持ってもらう」「患者の取り組みをモニタリングして経過を共有」などへの配慮も一定数見られた。後者2つについては、担当患者を持つ薬剤師はそうでない薬剤師よりも統計学的に有意に高い割合を示した。一方、同店舗内に栄養士が在籍としているのは1割程度と限定的であり、社外の栄養士と連携している薬剤師はさらに少なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は「検討Ⅱ:食事指導支援に関する薬局薬剤師向けの研修プログラムの構築」および「検討Ⅲ:食事指導支援に関する薬局薬剤師向け介入ツールの開発」の実施を計画していた。いずれも完成には至っていないものの、基本骨格をある程度固めることができた(検討Ⅱ-a、検討Ⅱ-aは完了とする)。 一方、「検討Ⅳ:食事指導支援に関する薬局薬剤師向けの『介入ツール』の実用性の検討」を行う際には、薬局外の管理栄養士との連携も想定したプログラムとすることが望ましいと考えており、新潟県薬剤師会および新潟県栄養士会には今後の研究計画を伝えている。両団体からは研究協力について内諾を得ており、円滑な実施につながることが期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた外来通院患者に対する食事療養支援に関する種々の知見から、薬局が貢献しうる余地は極めて大きいことがあらためて確認された。薬剤師が栄養士と連携を進める形態としては、個々の薬局に所属する栄養士が極めて少ない現状を考えると、組織を越えた協働の経験を持てるような仕組みづくりが重要であると考える。 2021年度は「検討Ⅱ:薬剤師・栄養士の効果的な協働スキームの策定」及び「検討Ⅲ:薬剤師・栄養士向けの研修プログラムの策定」を完成させることを目指す。いずれも、研究協力者として薬局薬剤師、管理栄養士、糖尿病専門医で構成する「アドバイザリーボード」において検討を行うことを想定している。対面での会合は難しい可能性が高いものの、Web開催などにより種々の視点からレビューを行った上で完成するようにしたい。デジタル支援ツールについてはチャットボット型での構築を考えており、パイロット版を限られた協力薬局で使用してもらい、現場薬剤師のユーザー評価を踏まえて、段階的に改良を加えていく予定である。 また、「検討Ⅳ:食事指導支援に関する薬局薬剤師向けの『介入ツール』の実用性の検討」の開始準備として、当初計画に沿って進めていきたいと考えている。 一方、新型コロナウイルスの影響により、保険薬局においては現時点(2021年5月現在)でも、患者の滞在時間ができるだけ短くなるように配慮されている。「検討IV」の実用性検討にあたっては、保険薬局の業務対応状況を見極めた上で適切なタイミングで実施できるように調整していきたい。
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Causes of Carryover |
2020年度で予定していたデジタルツール構築の費用は未消化であるため、2021年度に発生することになる。年度前半は対面での会合にWeb開催が中心になると思われるが、後半については研究打合せのための会議費・旅費が別途発生する可能性がある。
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