2021 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病患者の治療行動改善のための薬局薬剤師と栄養士の地域連携モデルの構築
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19K16426
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Research Institution | Nigata University of Phermacy and Applied Life Sciences |
Principal Investigator |
富永 佳子 新潟薬科大学, 薬学部, 教授 (90837759)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 食事療法 / 多職種連携 / 薬局薬剤師 / 管理栄養士 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病患者の食事療法に関する薬局薬剤師向けの患者対応指針を策定した。食習慣の行動変容を実現するためには段階的なアプローチが必要と考えられるため、第1段階(患者の治療状況と病識、主治医の治療方針を把握する)、第2段階(患者の食習慣の課題を明らかにする)、第3段階(改善したいがうまくできない患者の実践意欲を高める)に分けて、患者への問いかけを例示する形式でまとめた。
薬剤師が実際に薬局において、糖尿病患者への対応を進めていくためのツールとして『ミニリーフレット』並びに適切にそれらを使用できるような説明書として『資材の使用ガイド』を作成した。『ミニリーフレット』は説明した後に薬袋とともに手渡しやすいように小型(A5版)とし、「欠食は高血糖の原因」「就寝前の食事・おやつは要注意!」「賢いおやつの選び方があります」「空腹時にお勧めのおやつ」「野菜の種類と量が大切」「野菜・おかずを先に食べ、血糖上昇を抑える」の6種類である。いずれも学術的な根拠があり、糖尿病診療ガイドラインにおける食事療法の指針にも合致するものであるが、特に血糖管理に影響の大きい内容に焦点をあてている。栄養学・食品学・調理学の知識のある管理栄養士による指導ではなく、薬剤師が対応することを考慮し、食事時間や食べ方など助言しやすいものとした。
一方、『資材の使用ガイド』はミニリーフレット毎に活用時の要点をまとめたものである。リーフレットの作成にあたって、患者にとっての分かり易さに重点を置き、根拠データを示す場合も事実から逸脱しない範囲で可能な限り簡略化し、メッセージの伝わりやすさを最優先した。そのため、それぞれの根拠データの詳細や、どのような点に注意して患者に説明する必要があるのかを示した。これらを継続的に活用していくことで、薬剤師自身も食事療法について理解を深めていくことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は「検討Ⅱ-b:食事指導支援に関する薬局薬剤師向けの研修プログラム」は概ね完成し、「検討Ⅲ-b:食事指導支援に関する薬局薬剤師向けデジタル介入ツールの完成」については、デジタルツールへの展開は断念したものの、介入の指針となる「糖尿病患者の食事療法に関する啓発資材」(ミニリーフレットとその使用ガイドを含む)を作成することができた。しかしながら、その他の進捗は十分とはいえない。研究責任者の所属変更に伴い、学内業務(担当授業と各種委員会・会議への参加など)が大幅に増加し、研究に従事する時間を捻出することが困難であったことに加えて、コロナ禍による非日常的な状況が続く中、医療現場の協力を得ることも容易でなかったことが主な理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度に作成した、『糖尿病患者の食事療法に関する啓発資材』(ミニリーフレットとその使用ガイドを含む)の実証的研究を進めていくとともに、管理栄養士との連携の指針を策定し、可能な範囲で連携の実践を試みる。当初計画では2022年度が4年間の研究期間の最終年度であるが、コロナ禍の影響を受け、実施計画の見直しを余儀なくされたことから、期間を延長して取り組む予定である。尚、一昨年に計画していた「デジタル介入支援ツール(チャットボットを活用したもの)」については、保険薬局の現状としてデジタルデバイスの活用は極めて限定的であることが判明したため、今回は作成を見送ることとした。
検討Ⅲ-糖尿病患者の食事療法に関する啓発資材の公開と活用促進:大学の研究室ホームページにおいて『糖尿病患者の食事療法に関する啓発資材』を公開し、希望する薬局薬剤師に提供して、広く活用されるよう環境を整え、告知活動にも注力する。具体的には、地域薬剤師会を通じた伝達、学術集会などの機会を活かした伝達、また薬局薬剤師をターゲットとするニュースメディアへの働かきかけにより記事として採用されるような機会も模索する。提供先に対して、一定期間後に使用状況を確認するとともに、実際に活用する上での改良点などの意見、資材作成の追加要望なども広く募り、活用度の高い資材となるよう改良・改善することを目指す。
検討Ⅳ-薬局薬剤師と管理栄養士の連携指針の策定:『糖尿病患者の食事療法に関する啓発資材』を活用する保険薬局を対象として、管理栄養士との連携の現状について調査を行い、その結果を踏まえて指針策定を進めていく。さらに、薬局薬剤師と管理栄養士との連携を促す指針の適応事例を収集し、個々の症例について詳細検討を行うことで、連携による効果を患者の治療アウトカムのみならず、かかりつけ薬剤師としての職能発揮や職種間連携など種々の視点から考察する。
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Causes of Carryover |
2021年度で予定していたデジタルツール構築の費用は未消化であるため、2022年度に発生することになる。年度前半は会合についてもWeb開催が中心になると思われるが、後半については研究打合せや関連学会参加のための旅費が別途発生する可能性がある。
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