2019 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of a new mechanisms of action on drug-drug interaction of
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19K16435
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
鈴木 賢一 星薬科大学, 薬学部, 教授 (40775508)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 免疫チェックポイント阻害薬 / CYP3A / インターロイキン-6 / 薬剤性肺障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は、肺がんや腎がん、悪性黒色腫など、多くのがん領域で治療の中心となりつつある薬剤である。 本研究はICIを投与された患者に対し、採血を実施しインターロイキン-6(IL-6)の過剰放出を介して薬物代謝酵素(CYP3A)活性が治療前と比較して低下することを検証する研究である。CYP3Aは多くの抗がん薬や一般薬が基質となる代謝酵素であり、この活性が低下することは薬剤の代謝が遅延し、効果や副作用の増強につながることが想定される。従ってICIと併用される抗がん薬や、ICI治療後に使用される抗がん薬の効果や副作用にも 影響を与える可能性がある。昨今は特にICI単独で使用されるよりも他の抗がん薬との併用で投与されることが増えている。またICIを組み込んだ治療が、first line で使用されるエビデンスも増えており、ICI併用時や治療後における薬物代謝酵素への影響を確認することの重要性はより高まっていると言える。一方、2016年にはICI治療後に投与されたEGFR-TKI(チロシンキナーゼ阻害薬)により、薬剤性肺障害を発症し死亡した事例が、医薬品医療機器総合機構より報告されている。本研究の仮説が証明された際は、薬物間相互作用の機序解明のみならず、いまだ機序が不明とされている、ICIやEGFR-TKIに起因する薬剤性肺障害の原因解明にもつながる可能性がある。EGFR-TKIをはじめ、多くの分子標的薬は、高い治療効果が得られる一方でその薬剤が原因となって発症する薬剤性肺障害は、罹患した際の死亡率が高く(約30-50%)、発売当初から問題視されているものの、いまだ詳細は不明である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は2019年度中に実施計画書の作成、研究協力者の選定、検体採取に用いる器具などの選定および購入、協力医療機関との連携、検体運用方法等を確定し今年度より症例登録を開始する予定であった。しかしながら、CYP3Aのマーカーとして想定していた4β-水酸化コレステロールを用いた測定方法につき、妥当性の裏付けに時間を要した点や,COVID-19の影響により、関連の医療機関における研究関連業務の一時中断や、年度末のため関係スタッフの所属の異動などが重なり、研究の進捗が滞っている。測定方法に関しては関連論文等の整理によってクリアできる予定であるが、医療機関における研究事業の遅延は2020年6月の時点でも、いまだ大きな変化がなくしばらくは停滞が続くことを想定している。WEB面談および病院実習時の指導に活かして参ります。などを活用し事務的な準備を進めてはいるが、直接面談や説明が必要な部分も残されており、関連する施設側の外部からの訪問者に対する規定が緩和され次第、具体的な準備を再開する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を計画した時点では、検体(採血)採取のタイミングに関して、患者1名に対しICI治療直前、2回目治療の直前、3回目治療の直前、治療終了後14-28日の間、同じく終了後50-65日の間の合計5回実施する予定であった。しかしながらICIの副作用は重篤な症状が発現することがあるものの、全般的には比較的軽度であることが分かりつつあり、昨今では該当する治療の多くは外来通院治療として実施されている。そのため本研究の採血のために患者を来院させることは、探索的な研究という本研究の位置づけを考慮すると過度な負担につながると考える。従って予定していた採血の機会の確保が難しいため、採血のポイントを治療直前、1回目治療後の採血時、2回目治療直前の計3回までと変更する予定である。また、COVID-19感染症対応により医療機関では業務負担が増加しており、想定していた検体数(約50例)が集まらない可能性がある。協力医療機関の数を数施設に増やし、1施設当たりの症例数を減じるなどの対策を講じることで、対応が可能と考えている。なお、2020年度より症例登録を開始し、2021年6月を目途に検体回収、および解析を終了し、同年秋の国内外の臨床腫瘍系学会等で発表予定である。あわせて2021年度中に論文を作成し公表する。
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Causes of Carryover |
2019年度の3月に、日本臨床腫瘍薬学会(福岡)に参加し、本研究に関連した情報収集や、免疫チェックポイント阻害薬に関するシンポジウムでの講演などを予定していた。この学術集会には、参加費や旅費などについて直接経費を使用する予定であったが、COVID-19の影響により学術集会自体が中止となった。しかしながら、シンポジウムでの講演は要旨上での発表にて実施したものとみなされ、参加費として10000円を使用した。 また、実施計画書冊子作製費用、検体採取のための試験管や検体郵送のための保冷バッグ、など備品の購入はCOVID-19の影響にて準備がすすまず、2019年度内に購入することができなかったため、次年度使用額が生じた。
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