2019 Fiscal Year Research-status Report
ヒト血液脳関門に発現する新規有機カチオン輸送体の基質構造と分子実体解明
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19K16453
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
手賀 悠真 帝京大学, 薬学部, 助教 (50809043)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 血液脳関門 / トランスポーター / Diphenhydramine誘導体 / 構造活性相関 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、ヒト血液脳関門において、塩基性薬物を脳内へ輸送するH+/有機カチオン交換輸送体の存在が示唆されており、その機能的特性から医薬品開発への応用が期待されている。しかし。H+/有機カチオン交換輸送体の分子実体は明らかになっておらず、基質構造に関する情報も少ない。本申請課題では、H+/有機カチオン交換輸送体の認識に重要な化学構造を明らかにするとともに、分子実体の解明を目的とした。 2019年度は、H+/有機カチオン交換輸送体を介した輸送と化学構造との関連性について検討した。第三級アミン及びアミド構造を有するdiphenhydramine誘導体を合成し、その輸送特性を、ヒト不死化脳毛細血管内皮細胞 (hCMEC/D3細胞) を用いて評価した。hCMEC/D3細胞における初期取り込み速度は、第三級アミン構造を有する化合物で非常に大きく、その輸送はH+/有機カチオン交換輸送体の基質として知られるpyrilamineによって顕著に阻害された。また、アミン化合物の取り込みでは細胞内pH依存性およびH+/有機カチオン交換輸送体基質によるtrans-stimulation効果が示された。一方で、第三級アミド構造を有する化合物の初期取り込み速度は、第三級アミンよりも小さく、pyrilamineによる阻害効果も限定的であった。以上から、H+/有機カチオン交換輸送体の基質認識には少なくとも塩基性を示すアミン構造が必須であることが示唆された。アミン化合物の中でも、環状アミン化合物の取り込み速度が大きかったことから、複素環構造がH+/有機カチオン交換輸送体による輸送に重要である可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、H+/有機カチオン交換輸送体を介した輸送と化学構造との関連性について解析し、アミン構造、中でも環状アミンが重要であることを示すことができた。次にこれまでの解析データと併せてin silicoによる構造活性相関解析を計画しており、そのための基盤としては十分な成果が得られたと判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
H+/有機カチオン交換輸送体の認識に重要な基質構造については、さらに詳細な解析を継続して実施していく。得られた輸送と化学構造の関係性から高親和性プローブを探索し、分子実体同定に繋げていく予定である。
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Causes of Carryover |
本研究で評価対象とした化合物のうち、一部の化合物ではプラスチック容器への吸着が大きく、正確な解析が困難であったため実験を断念せざる終えなかった。そのため、想定していたよりも輸送解析実験に要する費用が低くなった。次年度は構造活性相関のデータをもとに高親和性プローブを探索する計画であり、本年度の未使用額はそれら費用に充てる。
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