2021 Fiscal Year Research-status Report
光によるスルホキシドの立体化学の制御とその医薬品候補化合創製への応用
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19K16454
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
牧野 宏章 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (40784369)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 光 / ラセミ化 / キラルスルホキシド / 光増感剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、キラルなスルホキシドを有する医薬品やその関連化合物に対して光エネルギーによる光学純度の低下が起こるか検討し、スルホキシドの光学純度が低下する構造的要因を明らかにしてきた。その結果、可視光光増感剤存在下、LEDによる可視光照射により、瞬時に(<1 min)キラルスルホキシドがラセミ化することを見出した。この成果を利用し、3年目以降スルホキシドのラセミ体について光による不斉誘起反応の開発と医薬品合成への応用を行ってきた。その結果、HPLCリサイクルシステムを用いた実用性の高い動的不斉誘起法を開発した。本動的不斉誘起法は、以下の工程によって成り立つ。初めに、キラルカラムによって所望するエナンチオマーを分取したのち、もう一方のエナンチオマーをリサイクル経路に戻し、固相担体に結合した固相光増感剤存在下光を照射する。光照射によりごく短時間(1分程度)でラセミ化反応が進行し、得られたラセミ体をキラルカラムによって分離し、所望するエナンチオマーを分取する。予備的な検討ではあるが、この工程を4回繰り返し、キラルなスルホキシド化合物であるクロルプロマジンS-オキシドを86%の収率、98%eeの光学純度で得ることができた。また、繰り返し回数を増やすことで、収率の向上が容易に可能である。これにより、動的不斉誘起法が医薬品の原料となるキラルな化合物の合成に有用であることを実証した。本システムは、全く不斉源を用いず、光とキラルカラムを用いてリサイクルHPLCを作動させるだけで、キラル化合物をほぼ100%の収率、100%eeの光学純度で製造することができ、非常に有用性が高い。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究結果は、特許取得を目指し、研究開発を行っている。 そのため、論文発表や学会発表にやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
本動的不斉誘起法を用いて、スルホキシドの基質一般性や医薬品への適用拡大を検討していく。また、本技術を用いて製造販売を見据えたシステムの開発及びプロトタイプの開発を行っていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍による研究速度の低下
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Research Products
(6 results)