2019 Fiscal Year Research-status Report
薬物トランスポーターTETRANの基質認識・輸送特性の解明
Project/Area Number |
19K16456
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
川嵜 達也 愛知学院大学, 薬学部, 講師 (70722073)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | TATRAN / MFSD19 / トランスポーター / 輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
Tetracycline transporter-like protein (TETRAN) は細菌,真菌,動物に存在する膜タンパク質で,非ステロイド性抗炎症薬などの薬物排出トランスポーターであると考えられている。しかし,その基質や生理的意義などほとんどわかっていない。本研究の目的は,薬物トランスポーターとしてのTETRANの基質認識・輸送機構を明らかにし,その生理的および薬物動態学的意義を見出すことにある。2019年度は,プローブ基質・阻害剤の探索およびTETRANタンパク質の精製・再構成系構築を試み,以下の成果を得た。 HEK293細胞TETRAN安定発現株を樹立し,これを用いて細胞毒性試験による毒性基質の探索を行った。リン酸基を持つ2化合物,抗ウイルス薬ホスカルネットおよび骨粗鬆症治療薬ゾレドロン酸を新規基質として見出した。さらに,毒性基質と異なりTETRAN発現によって細胞障害が亢進する興味深い化合物としてスペルミンを同定した。また,肝細胞取り込み試験などで用いられているoil-spin法によって,直接輸送を測定することに成功した。これを用いて蛍光性化合物の細胞内蓄積を比較した。水溶性側鎖を持つ,5-カルボキシフルオレセインおよび6-カルボキシフルオレセインならびにラクトン環を巻かない誘導体スルホフルオレセインは有意な輸送が見られなかった。一方,これらの母核構造を持つフルオレセインは有意な輸送が見られ,プローブ基質として至適であることを見出した。 また,TETRANタンパク質を大腸菌に過剰発現させ,精製するためのコンストラクトを構築した。再構成系を用いた輸送活性測定のための予備的検討に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,基質および阻害剤の探索に着手し,ホスカルネットおよびゾレドロン酸などの新規基質を見出すに至った。一方,2020および2021年度の予定項目実施に必要となる精製・再構成法を用いた輸送活性測定系の構築を計画していた。しかし,再構成リポソームと遊離基質の分離が不十分であるため構築に至らず,2020年度実施課題となった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,TETRANの生理的および薬物動態学的意義を明らかにするために,引き続き構築済みのHEK293細胞TETRAN発現系を用いて基質および阻害剤を探索する。また,当初計画では2021年度に予定している輸送機構の解析を実施するために,遊離基質-再構成リポソーム分離法を検討し,再構成系を用いた輸送試験系を構築する。
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Causes of Carryover |
3月中に約10万円分の試薬購入を予定していたが,在庫がないために年度内の納品に至らず次年度使用額が生じた。2020年度交付金は当初計画通り,消耗品費(タンパク質の精製・再構成および基質・阻害剤候補化合物等の試薬購入)および旅費(学会等発表)として使用する予定である。
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