2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞内薬物動態における脂肪酸結合タンパク質の役割解明に向けた分子機構解析
Project/Area Number |
19K16458
|
Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
山本 篤司 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (90633991)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 脂肪酸結合タンパク質 / FABP / 薬物結合 / 変異体解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸結合タンパク質(fatty acid-binding protein, FABP)は多くの組織の細胞内に豊富に存在し、基質特異性が低く、さらに様々な疎水性薬物と結合する。これらの特徴は血液中に存在する血清アルブミンと共通している。しかしながら、アルブミンを対象とした薬物動態学研究は盛んに行われているのに対し、FABPを対象とした薬物動態に関する研究はほとんど行われていない。本研究では、FABPの薬物動態における役割を理解し、細胞内薬物動態学という新たな学問の開拓を目指している。 2019年度は、10種存在するFABPアイソフォームのうちFABP4と5における薬物認識性の違いを理解するため、FABPの変異体解析に取り組んだ。FABPは構造的に2本のα helixからなるα-helix領域とβ-barrel領域に大別される。そこで、FABP4と5のα-helixとβ barrelを入れ替えた変異体を作製し、それぞれのリコンビナントタンパク質を用いた薬物結解析を行った。その結果、FABP4の部位を入れ替えることにより基質特異性がFABP5 likeに変化し、その変化はα-helixよりもβ-barrelを入れ替えた場合において顕著であった。また、β-barrel内に存在し、FABP4と5で異なるをアミノ酸残基について1アミノ酸変異体解析を行ったが、薬物結合能に大きな変化が見られなかった。従って、FABPの薬物特異性には複数のアミノ酸残基が寄与しており、その主たる要因はβ-barrel内に存在するものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、2019年度ではFABPの変異体を作製し、リコンビナントタンパク質用いた薬物結合実験に取り組むことができた。また、FABP4と5の変異体解析のみならずFABP2についても変異体解析を行い興味深い知見を得ることができた。FABP2には54番目のAlaがThrに置換された一塩基多型(A54T)が知られており、脂肪酸との親和性が変化することが報告されている。本研究ではA54Tを用いた薬物結合解析を行い薬物認識性について新たな知見を得た。次年度ではさらに詳細に解析を進め、FABP2 A54Tの薬物結合メカニズムについて理解を深める予定である。 これらの内容は申請時の研究計画に沿っており、研究の進捗状況はおおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は培養細胞を用いたin vitroの解析を予定しており、ヒト肝由来HepG2細胞に発現するFABP1のknock downに取り組む。HepG2細胞を用いた実験は既に稼働しており、knock down実験に必要な試薬・器具も準備できているためスムーズに実験に取りかかることができる。siRNAによるFABP1のknock downをリアルタイムPCRおよびWenstern blotにより確認した後、降圧薬フェノフィブラートや解熱鎮痛薬インドメタシンなどの疎水性薬物の取込能をHPLCにより評価する予定である。また、進捗状況に応じてFABP1のknock downが薬物代謝に及ぼす影響ついても解析を行う。FABP1をknock downさせた細胞の抽出液に対しフェノフィブラートを添加した後、フェノフィブラートの代謝物を測定することでFABPと薬物代謝との関係解明に取り組む。
|
Causes of Carryover |
必要な試薬・器具の購入が年度内に間に合わなかったため、一部を次年度に繰り越した。
|