2020 Fiscal Year Research-status Report
細胞内薬物動態における脂肪酸結合タンパク質の役割解明に向けた分子機構解析
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19K16458
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
山本 篤司 鈴鹿医療科学大学, 薬学部, 助手 (90633991)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脂肪酸結合タンパク質 / FABP / 薬物結合 / 変異体解析 / 薬物代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
脂肪酸結合タンパク質(fatty acid-binding protein, FABP)は様々な組織に広く分布し、脂肪酸や疎水性薬物などの基質の細胞内輸送を担うと考えられている。哺乳類において、FABPには10種のアイソフォーム(FABP1~9, 12)が同定されているが、薬物動態における役割の違いについては不明な点が多い。細胞外すなわち血中においては、血清アルブミンやα酸性糖タンパク質が様々な薬物と結合し、薬物動態に大きく影響を及ぼすことが明らかとなっている。一方、細胞内においてFABPが薬物動態与える影響についてはほとんど研究されていない。本研究では、FABPの薬物動態における役割を理解し、細胞内薬物動態学という新たな学問の開拓を目指している。 2020年度は、FABPが薬物代謝に与える影響について研究を進めるため、FABP1と特に親和性が高い降圧薬フェノフィブラートに着目した。フェノフィブラートには少なくとも3種の代謝物が知られているが、その一つ還元型フェノフィブリン酸(RFA)の入手は困難であった。そこで、有機合成により高品質のRFAを十分量確保した。現在、作製したフェノフィブラート代謝物とミクロソーム画分や培養細胞HepG2を用いて、FABPがフェノフィブラートの代謝に与える影響について解析している。また、2019年度に引き続きFABPの変異体解析についても研究を進め、FABPのN末端側にある2つのαへリックスが薬物選択性に関わることを見出した。そこで、そのうちの3つのアミノ酸について1アミノ酸変異体を作製し、薬物選択性に与える影響について解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
フェノフィブラートにはフェノフィブリン酸(FA)、グルクロン酸抱合型FA(GFA)および還元型FA(RFA)の代謝物が知られているがRFAは市販されていない。そこで、本学所属の藤田助教の助言のもと、FAからRFAの合成を行った。現在はこれら4種の化合物の分離検出系の構築に着手しているが、機器のトラブルにより未だ確立には至っていない。現在は稼働しているため、分離検出系の早々の構築に臨む。また、2019年度に引き続きFABPの変異体解析についても研究を進め、FABPのN末端側にある2つのαへリックスが薬物選択性に関わることを見出している。そこで、FABP4のVal23、Thr29、Ala33をそれぞれLeu、Leu、Glyに置換した変異体を作製し、これらのアミノ酸残基が薬物選択性に及ぼす影響について解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度では、ヒト肝由来HepG2細胞を用いた解析に加えミクロソーム画分を用いた解析を進める。これは、薬物代謝の中心となるミクロソーム画分と精製したFABPを用いることで、FABPが薬物代謝に及ぼす影響をよりシンプルに評価できると考えられるためである。さらに、FABP1のknock down実験によりFABPが薬物動態に及ぼす影響を細胞レベルでも解析し、FABPと薬物動態との関係解明に取り組む。
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Causes of Carryover |
年度末に注文した製品の納期が、次年度となったため繰越金が生じた。
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