2019 Fiscal Year Research-status Report
経鼻‐脳実質内薬物送達法による中枢系疾患治療を指向した神経炎症抑制効果の検討
Project/Area Number |
19K16465
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
井上 大輔 立命館大学, 薬学部, 助教 (50550620)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 経鼻投与 / 脳内薬物送達 / 神経炎症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、薬物動態学的検討として、候補薬物の性質に応じた経鼻投与後の脳移行特性を詳細に解明するため、物理化学的特性の異なる種々モデル薬物を用いて、ラットに経鼻投与した後の脳内および血中移行性、血中動態、鼻から脳への直接移行効率を評価した。 本検討では、脳脊髄液に加え、脳を4部位に分離することで脳部位別薬物移行特性を定量評価し、脳部位別に、経鼻投与後の鼻から脳への直接移行率を算出した。静脈内投与および経鼻投与後の経時的な脳内濃度推移を観察し、各モデル薬物の脳内移行性を比較した結果、脂溶性が高い薬物では脳移行量が増大する一方で、経鼻投与後の鼻から脳への直接移行率は低下し、血中を介した脳移行率が高くなることが明示された。さらに、脂溶性が低い薬物ほど、経鼻投与後の鼻から脳への直接移行率が高いことが示された。一般的に脂溶性が低い薬物は血液脳関門の透過性が低く、血中を介した脳への薬物送達が困難であるが、脂溶性の低い薬物においても、経鼻投与による鼻―脳直接移行経路を利用することで、効率的に脳内送達できる可能性が示唆された。 本成果から、いまだ不明瞭な経鼻投与後の鼻から脳への直接移行経路における薬物移行メカニズムの詳細解明に繋がる新規知見を得ており、これらの研究成果は経鼻投与経路を利用した中枢神経系疾患の治療法を確立する上で重要な基礎的知見となる。今後、本検討で得られた成果に基づき、抗炎症作用を有するモデル薬物を用いた経鼻投与後の脳移行特性を評価し、神経炎症に対する治療効果を検討する予定である。併せて、実用的な経鼻投与型製剤の開発を目指して製剤化研究を進めており、経鼻投与型製剤による神経変性疾患に対する有用な治療戦略の確立を試みる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請時から所属機関が異動したことに伴い、本研究課題を遂行するための実験施設の整備が必要となり、実験を遂行できる環境を整えるために時間を要したため、当初計画から遅れている。現在は、必要な設備や環境は整っており、遅れてはいるものの、本研究課題を完了するため、着実に研究を遂行している。
|
Strategy for Future Research Activity |
所属機関の異動に伴う研究環境の設置が必要であったが、本研究課題を遂行するために必要な設備や環境が全て整い、本課題は解決済みである。現在、本研究を計画通りに遂行できるように努めており、研究計画の一部については既に研究成果を得ている。今後は、モデル薬物選定の効率化を行い、体内動態研究と製剤化研究を並行して遂行することで研究の推進をはかる。また、薬理学的検討では、薬物動態評価の成果を踏まえて、検討するモデル薬物を有効性が期待できる薬物に絞って評価する。これらの研究推進を試み、当初計画通りに本研究を遂行、完了させる予定である。
|
Causes of Carryover |
所属機関の異動に伴い、研究に必要な設備や研究環境を新たに整える必要があり、研究を遂行できる環境を整備するために時間を要したため、当初計画より研究の進捗が遅れている。現在は、本研究を遂行できる環境が全て整っているが、当該年度に予定していた物品の購入や研究成果発表のための旅費等の使用ができなかった。現在、本研究課題の実験計画に沿った研究を遂行しており、翌年度において初年度に予定していた物品を購入し、研究成果を発表する予定であるため、当初予定の経費が変わらず必要となる。従って、次年度において、翌年度に請求した助成金と合わせて使用する予定である。
|