2020 Fiscal Year Research-status Report
Three-dimensional analysis of ultrastructral changes of nuclear membranes and chromosomes during cell division using electron microscopy
Project/Area Number |
19K16472
|
Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
早津 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (40468898)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 細胞分裂 / 電子顕微用 / 培養細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、電子顕微鏡を主な実験ツールとして、体細胞分裂時に生じる核膜の崩壊・消失および再形成と染色体形成過程について、微細構造学的にかつ三次元的に詳細を明らかにすることを目的としている。本年度は、まず免疫電顕法と連続切片-三次元再構築法を組み合わせた体細胞分裂時の核膜局在の解析を試みた。昨年度、各分裂期の細胞を一度に効率よく得るための培養条件を決定しており、この条件に基づき、核膜が崩壊・消失が始まる分裂前期から核膜の再形成が行われる分裂後期までの各分裂期の細胞を得て、電顕観察試料を作製した。さらに核膜に存在する蛋白質ラミンBに対する免疫染色を行い、連続切片-三次元再構築法で、細胞分裂前中期から後期の間の核膜の局在およびその動態変化の解析を試みた。しかし、免疫電顕法による核膜の局在の観察では、予想していたほど有効な結果が得られず、さらに連続切片-三次元再構築法で使用する電子顕微鏡が故障したため、当初予定していた実験を進めることが困難となった。そこで、当初の実験予定を変更し、蛍光顕微鏡によるライブセルイメージングと透過型電子顕微鏡による微細構造観察とを組み合わせた微細構造観察法で本研究の目的を達成させることとした。そして、本年度は、蛍光タンパク質を標識した細胞を材料として、同一の細胞を蛍光顕微鏡と透過型電子顕微鏡とで観察する方法の検討を行なった。また、本研究で用いる材料についても再検討が必要となったため、細胞の培養条件の検討を行なった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実験上の不具合と装置の故障により、予定していた実験を遂行することが困難となったため、実験計画を変更した。これにより当初予定した以上の時間が必要となったので、進捗状況としてはやや遅れている。しかし、本年度は以下の課題に取り組み、来年度、さらに実験を進めることにより、本研究の目的は達成できると考えている。 1.同一細胞を蛍光顕微鏡および電子顕微鏡で観察する方法の検討 これまでインドホエジカ胸腺由来培養細胞を用いていたが、分裂周期が長いことから、核と核膜のそれぞれに蛍光タンパク質を標識した細胞を作成するには、多くの時間を費やすことが予想されたため、材料としては、すでに核のヒストンに赤色蛍光タンパク質を標識してある骨芽細胞を用いた。これら細胞を蛍光顕微鏡で観察、周りの細胞の局在や形状を確認し、目的の細胞を決定、化学固定し、一般的な電顕微鏡観察試料を作製、目的の細胞の位置を確認して超薄切片を作製、透過型電子顕微鏡で観察した。その結果、同一の細胞を蛍光顕微鏡と透過型電子顕微鏡で観察することができ、細胞内微細構造について比較解析することができた。 2.細胞の培養条件の検討 インドホエジカ胸腺由来培養細胞で細胞分裂期の同調に使用し、有効な結果が得られていた微小管重合阻害剤であるコノダゾールを用いて骨芽細胞の細胞分裂期の同調を行なった。これまでの方法と同様に、ノコダゾールの濃度と処理時間、同調後の通常培地での再培養時間を検討、培養し、トリパンブルー染色液と血球計算盤と用いた光学顕微鏡観察で細胞生存率の確認、透過型電子顕微鏡による観察でコダゾール処理による微細構造への影響についての検討を行った。これにより細胞分裂中期、後期、終期、それぞれの細胞が最も多く得られる細胞培養条件を決定した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの実験より、骨芽細胞の培養条件を決定し、蛍光タンパク質を標識した細胞のライブセルイメージングで目的の細胞を同定し、その細胞内の微細構造を透過型電子顕微鏡で観察する方法が確立できた。今後は、すでに核のヒストンに赤色蛍光タンパク質を標識してある骨芽細胞の核膜に緑色蛍光タンパク質が恒常的に発現する細胞を作成する。さらに共焦点顕微鏡で体細胞分裂に伴って生じる核膜の構造および局在変化を三次元的に解析し、さらにこれら細胞の微細構造学的解析を透過型電子顕微鏡で行う。これによって、体細胞分裂時に生じる核膜の崩壊・消失および再形成と染色体形成過程についての詳細を明らかにすることができる。
|
Causes of Carryover |
当初、免疫電顕法と連続切片-三次元再構築法を組み合わせた各関連構造の三次元的構造解析を予定していたが、連続切片-三次元再構築法で使用する電子顕微鏡に故障が生じたが、新型コロナウィルス感染拡大防止措置による県外移動の制限の影響を受け、いまだ修理ができていないため、実験の遂行が困難となった。これにより、実験計画を変更し、蛍光顕微鏡によるライブセルイメージングで細胞分裂に伴う核膜の構造および局在変化を三次元的に解析し、同一視野を透過型電子顕微鏡で観察することで、各細胞分裂期の核膜や染色体の微細構造を明らかにし、本研究の目的を達成することとした。この研究計画の検討および変更のため、当初の予定より時間を有することとなったため、研究期間を延長した。次年度の研究費の使用計画としては、核膜に緑色蛍光タンパク質が恒常的に発現する細胞の作成が主な実験となるため、一般的な遺伝子組み換え実験で使用する消耗品、関連装置の使用料で大部分の予算を使用、さらに顕微鏡の使用料、学会発表、論文の投稿、および校閲費に予算を使用する予定である。
|